29回 帰りを待つ間に、義勇兵を取り巻く状況を踏まえてやれる事を探っていく 8
報告しなければならない事は正確に。
それ以外の細かな部分は仲良く接して来る者達だけに。
情報を提供していく事でタカヒロ達は、義勇兵を含めた者達の中での地位を築き上げていった。
なかなか手が回らない隙間をふさぐことで、タカヒロは重要な存在だと思わせていった。
能力の低かったもの、引退を目前にしていた者達を率いてのこと、効率はそれほど良くはない。
だが、それなりの収入も確保出来るようにもなっていた。
全体のレベルが上がったこと、そこに至るまでに無理をしないで続けた事が大きかった。
素質や才能はないから、短期間での能力向上はのぞめない。
ならば、時間をかけて確実に成長しようと言ってやってきた。
その結果が2年3年の活動で成果をあげてきていた。
怪我人、年寄りではあるが経験者を加えた事も良い方に影響をおよぼした。
新人では分からない事、モンスター退治における心得などを知る者がいたのは大きい。
それらが現場の生きた知恵をもたらしてくれた。
うだつの上がらない連中が生き残れたのは、そうした智慧によるところもあった。
また、長年の活動から、狩り場の周期のようなものもおおよそ分かっていた。
実際にモンスターを求めて活動場所を変えた経験もある。
そして、かつてはどこにどんなモンスターが生息していたのかをおぼえてる事もあった。
忘れた事も多いが、残っていた記憶がもたらした恩恵も大きい。
不用意に危険に近づかなくて済んだし、逆に狙い目のモンスターを見つける事も出来た。
何よりありがたかったのは、モンスターそのものは入れ替わってるはずなのに、生息する場所がほとんど変わらない事だった。
モンスターにとっても活動しやすく、生息しやすい場所というのはあるのだろう。
それらをもとに、改めて記録をとり、どこにどんなモンスターがいるのかを探っていった。
モンスターを倒し、核を手に入れる事も大事である。
だが、タカヒロがそれよりも重視したのは情報だった。
それこそがタカヒロが他に売りつけられる商品だった。
直接金銭を手に入れる事はないかもしれない。
だが、信用や信頼という金にかえられない、金に繋がっていくものを手に入れられる。
何も無いタカヒロ達にとって、それが何よりも大事だった。
信がなければまともな付き合いも出来ない。
もとより才能も能力もない者達である。
普通に活動していたら、箸にも棒にも引っかけてもらえない。
他の者達と協調し、最低限であっても協力をとりつける。
少なくとも敵対はしないような関係を手に入れる事が出来た。
活動していくにおいて、これほどありがたいものはない。
そうした立場を保つためにも、今後の活動をどうするかを考えていかねばならない。
大手のように、モンスターを効率良く倒して稼ぐなんて芸当は難しい。
なんだかんだ言って、タカヒロの集団は結局は零細だ。
レベルは上がったとはいえ、まだまだ心許ない所がある。
問題を抱えていた者達が多いのでこればかりはどうしようもない。
立ち回り方を考えていかねば、すぐにでも瓦解しかねない。
そうならないようにあれこれ考えねばならなかった。
もっとも、それよりもミオをどうするかを考える必要があった。