27回 帰りを待つ間に、義勇兵を取り巻く状況を踏まえてやれる事を探っていく 6
ボロボロの人間の寄せ集めで始まった作業は、それでも様々な問題に直面はした。
能力不足は目に見えてるので、他の集団よりも成果は見劣りする。
戦闘に支障が出るような者達すら入ってるのだから当然であろう。
それでも確実に生きて帰ってくるのと、他の集団が出向かない場所に行ってるというのはそれなりの利点があった。
何より大きいのは、様々な場所の現在の状態を掴んでるという事だった。
それらを正確に報告してる事で、情報の正確さを信用されるようになった。
成果を上げるのに都合の良い場所も、そうでない場所も、分かった範囲で正確に伝えた。
これによって、統治者などからの信用を得る事が出来るようになった。
まっとうな同業者からも支持を得るようになっていった。
なかなか分からないモンスターの分布についての情報が手に入るのだ。
文句があろうはずがない。
このあたりはある程度タカヒロも狙ってはいた。
義勇兵の中でも有用な連中と思われれば、変に敵は作らないだろうと。
支持者が増えれば今後の活動において、多少なりとも利点は出て来るだろうとも。
一番の利点は、こういった情報を流してもタカヒロに損失がない事である。
モンスター退治のついでに得られる情報なので、入手に手間がかかるわけではない。
むしろ、分布状況を正確に伝える事がで大手を牽制する事が出来た。
大手は巨大な組織を維持するために、一定以上のモンスターが出現する地域にしか出向かない。
ならば、それ以下の数しか出てこないと分かれば不用意に近づきはしない。
調べるために人手を割く余裕などそうそうあるわけでもないのだ。
出現するモンスターの数が分かれば、そうした無駄を省く事が出来る。
前提として、情報が正確である事、報告される数字が信用出来るものであらねばならない。
もし嘘の申告をしていたならば、その情報を不用意に信じずに調査の為に人を派遣するかもしれない。
そこで、申告以上に良好な出現数があれば、乗り込んでくる可能性が大きくなる。
そうなったらタカヒロとしては大きな損失になる。
そうならないように、申告も報告も正直に伝えていた。
ただ、あくまでタカヒロ達が見える範囲での事でもある。
見えない部分、分け入ってない場所などがどうなってるかは分からない。
どんなに頑張ってもそういった部分は出て来るので、情報の正確さはその分下がってしまう。
あくまでタカヒロが伝えるのは、タカヒロ達が見て回った範囲での事でしかない。
それは他の者達も納得していた。
どうしたって限界は出てくる事を理解してるからだ。
それであっても、何も情報がないのと、多少なりとも情報があるのとでは大きな違いになる。
大半の者達は、ささやかであっても情報を持ち帰るタカヒロ達の活動を評価していった。
例外的な一部、タカヒロ達のもたらす情報に文句をいう連中もいるにはいる。
こういった連中にはタカヒロは情報の提供を拒否していった。
統治者などへの報告はともかく、文句を言ってくるような連中にまで情報を流す理由は無い。
最低限の報告はするし、公開されていく部分もあるのでどうしても知れ渡ってはいく。
だが、より詳しい情報などは、親しくしてくれる者達にだけ伝えていった。
ここに情報格差が生まれていった。
その差は、すぐに結果を出すことはなかったが、時間と共に大きな変化になっていった。