250回 二世代目の活動が始まる時期に
「そういうわけで、お前もそろそろモンスター退治につれていいたい」
長男に向けて意向を伝える。
それを聞いてる長男は、特に動じた様子もなく、
「分かった」
とだけ応えた。
いずれそうなるというのは彼も分かってる事である。
何せ子供の頃からそういう事を直接間接問わずに言われてきてるのだ。
村の周囲はモンスターだらけ。
いずれ大きくなったら、それらと戦えるようにならないといけないと。
状況が状況だけに仕方ないのだろう、とは長男も思ってた事である。
むしろ、ある程度は戦えるようにならないとまずい、とは感じていた。
でなければ、襲われて死ぬ事だってあり得るのだから。
「それで、何時頃になるの?」
「モンスター退治か?」
「うん。
行く日が決まってるなら準備も出来るだろうし」
「まあ、そのうちな。
さすがに今すぐってわけじゃないから」
「分かった。
じゃあ、その時になったら教えてね」
「おう」
息子との会話はこんな調子で終わった。
「意外とどっしり構えてるもんだな」
話が終わって息子が立ち去ったあと、そんな事を漏らす。
我が子ながら肝が据わってると思った。
モンスター相手といったら、もう少し驚くものだと思っていたのだが。
「案外、大物かもしれんな」
「どうかしら」
すぐ傍にいたミオが冷めた調子で声をあげる。
「鈍いだけな気もするけど」
「まあ、そうかもしれないな」
言われてタカヒロも何となくそうなのかもとは思う。
日頃の長男を見てるとそう思えてならない部分もあった。
話を聞いてるのかいないのか分からない。
声をかけても生返事。
何かに集中するとそれに引き込まれて周りが見えなくなる。
かといって愚鈍だったり愚図だったりというほどでもない。
集会所で行われてる手習い教室での成績はそれほど悪くはない。
決して上位に食い込むというわけではないが、下位に留まるというほどでもない。
真ん中の中では上位といったところか。
特段秀でてはいないが、平均よりは上といったところである。
子供にあれこれ求めるつもりはないので、そこに文句はなかった。
むしろ、成績最低でない事に胸をなで下ろしたものである。
そういった子なので、賢愚の判断がつきかねた。
頭が悪いというわけではないだろうが、反応が鈍い時がある。
それがモンスター相手の場合にどう働くかが分からない。
全員の足を引っ張る事も考えられた。
ぬきんでた成果は求めないが、それだけは避けたいものである。
「まあ、やってみなくちゃ分からん事ではあるが」
「無理はさせないでよ」
「分かってるよ」
心配する女房の声に、タカヒロは適当に答えておいた。
最悪の事態にならないようには気をつけるが、それでも駄目な時には諦めるしかない。
最悪、死ぬ事も覚悟しておかねばならない。
モンスター退治に出向くというのはそういう事になる。
(切り捨てる事も考えて置かなくちゃならんか)
さすがに口にはしないが、それも考えのうちに入れておかねばならない。
実行するような事にならねば良いがと思いつつ。




