243回 参加してみれば予想外の事も起こっていった 3
タカヒロ達にとってそれよりも大きかったのは、経済的な部分だけではない。
伝承されてきた知識などに触れられた事の方が大きな利点になっていた。
長年続いた神社という組織のありかた。
そこに蓄えられてきた、各国の歴史についての記述。
公開されてる範囲のものがほとんどだが、様々な法律や施策などの記述とその結果。
近隣の町村などで起こった事の顛末。
様々なやりとりの保管記録など。
神社が第三者となってとっている文章などもある。
全く同じ内容の文章を複数作成し、当事者と神社の双方に保管してあるのだ。
国が滅んでも残っていく神社だからこそである。
それをたのんで、様々な身分のものがあらゆる資料を預けていったという。
それが積み重なって、貴重な歴史資料となっている。
これらが多いに参考になっていく。
また、信者というか関係者の資料もあるのがありがたい。
それらが戸籍の役割を果たしている。
国家というか政府も人口調査などで戸籍は管理してるが、完璧とは言い難い。
それに、政府がずっと続くという事も無い。
歴史上でよくある戦争による滅亡。
ソ連がそうであったように、政府による国民虐待や統治機構の腐敗による衰退。
そういった要因で政府が衰退して滅亡して新たな政府が発足する事もある。
その都度、前の政府が保有していた資料が散逸する事がある。
神社はそれとは別に周辺地域の信者達の生死や転居転入などを記録する。
これも完全完璧とは言い難いが、政治の混乱とは無関係に持続継続している事が多い。
こうして残る資料の数々が様々な示唆を与えてくれる。
単純なところでは、書式の参考になる。
何をどれくらいどのようなものを書き込まねばならないのか。
その場合、書き込む位置をどうすれば読みやすくなるのか。
そういった事も何となく分かってくる。
また、書き込まれた内容からどんな指示が出され、どのような結果になったのかも伺える。
様々な指示や施策とそれがもたらす結果から、為すべき事と控えるべき事も分かってくる。
中には町村の運営に関わる事もあり、それらはタカヒロ達の町や村の運営の参考になった。
全てが手探り状態だったタカヒロや頭領達からすれば、それらはやるべき事を示してくれる道しるべだった。
もっとも膨大な記録の全てを網羅できてる訳ではない。
それらをひもとき、役立つ何かを見つけていかねばならない。
その為に専属で資料を調べる者達がつけられていく事になる。
それはタカヒロ達の子供が成長してからになる。
貴重な人員をわざわざ割り当てるくらいには重要であった。
更に後の世において、資料を集めて様々な指南書が作られていく。
それが義勇兵達が作り上げていく彼等の領域の発展に寄与していく。
一方で神社という組織に組み込まれたのも事実である。
これらが求めるものもあり、利益だけが得られるわけではなかった。




