24回 帰りを待つ間に、義勇兵を取り巻く状況を踏まえてやれる事を探っていく 3
事前の調査を誰かに求められてるわけではない。
もともとは、自分が行うモンスター退治を効率良く行うためにやっていた事だった。
義勇兵の残す出発の記録。
これらを見渡す事で何かが分かるのではないかと思っての事だった。
単純に、狩り場の推移だけでも分かればと思ってのものだった。
そうして調べていく事で、一定の間隔で狩り場が変わってるのが分かった。
モンスターの出現が少なくなってきたので、別の場所に移っていったというのが理由の大半だった。
これらは経験則からだいたいの間隔も分かっているという。
なので、タカヒロがそこから新たな発見をするという事もなかった。
前世の知識があるといっても、専門的な分析が出来るわけではない。
他の、この世界の一般的な者達に比べれば図抜けた知識を持ってるが、それが全て活用出来るわけではない。
基礎的な修養は群を抜いてるが、それらを有効活用する方法までは身につけてない。
そういう意味では、タカヒロも他と大差はないと言えた。
だが、それでも他よりも物を知ってるというのは有利ではあった。
何かしら考える土台を持っているのだから。
そこから何かが見えてこないかとタカヒロは考えていった。
そして少しだけ見いだす事が出来た。
狩り場を変える時期に生じる、全体的な無駄を。
一部の狩り場がモンスターの乱獲で使えなくなり、別の場所に移るのは分かった。
だが、その狩り場をどこにするかで結構迷う時期があった。
出向いてない他の場所の状態が良く分かってないからだ。
モンスターを倒す書き入れ時に、わざわざ他の場所を調査するような物好きは少ない。
ここにわずかながら隙間があった。
義勇兵は基本的に各自が勝手に動く。
いくつかの集団に分かれてはいるが、それらが横の連携をとってるわけではない。
情報の共有など望むべくも無い。
同業他社が競合してるようなものだ。
有益な情報をそう簡単に流すわけがない。
その結果、どこに何がどれくらいいるのかすら分からなくなっている。
だったら、俺が調べればいい────タカヒロの考えはこれであった。
何の事は無い、他の者が出向いてない他の場所をちょっと視察するというだけである。
たったそれだけであるが、他の者達に先んじて、そろそろ狩り場を変えるという直前あたりであちこちを見て回る。
たったそれだけだが、どこでどのくらいのモンスターがいるのかが見えてくる。
その情報を他の義勇兵に売る事で、金を多少は稼ぐ事が出来た。
また、そうやって視察をする事で分かる事もあった。
意外とモンスターが出現する…………それが他の場所を巡った感想だった。
確かに大量の義勇兵が出向いたら、それほど大きな稼ぎにはならないだろう。
だが、数人、あるいは十数人という程度の人数で活動するなら充分な成果を得られる。
これは大手の集団では得られない利点である。
少数派というか零細だったタカヒロは、こうした隙間を狙い、閑散期の他の狩り場で仕事をするようになった。
同じようにあぶれていた者達を募って。