238回 もういっそ鞍替えをしてしまおうかと 4
現在、タカヒロ達にかけられてる税率は3割である。
収入の中からこれだけを差し引かれる。
はっきり言って高い。
だが、神社領になればこれが各段に安くなる。
基本的に神社維持のために、収入の1割を納めるよう求められる。
これが神社の名前を掲げるための看板料であった。
「今より自由に使える金は増える。
その分、国の保護も受けられなくなるけど。
でも、今だって俺達たいした扱いはされてないから、これは考えなくてもいいだろう」
政治が提供する利益というのは目に見えにくいものではある。
基本的に生活基盤の建造や維持などがほとんどだからだ。
それも、街道や灌漑などならばまだ分かりやすくはあるだろう。
だが、戸籍の管理などとなると、直接的に成果が見えないだけに効果が分かりにくい。
なので、分からないからといって政治が提供する利益などがない、とは言えない。
なのだが、それでもタカヒロ達義勇兵はその恩恵をほとんど受けてないと言えた。
失敗に終わった攻勢の直後という事もあるのだろう。
どうしてもやらねばならない事も後回しになってしまっている。
そんな中でタカヒロ達は、必要な物資を集めて流通させていた。
全て自力で行ってである。
廃棄された廃墟を復活させ、そこを通る街道を整備し、モンスターの脅威も排除している。
これらは本来は政治が行うものがほとんどだ。
あるいは、ある程度の補助や援助を期待したいものではある。
なのだが、ほとんど義勇兵達が自分達でまかなっていた。
こんな中で税金はいつも通りに取られていくのである。
さすがに不満が出て来るというものだった。
「だったら神社に金を払ってた方が幾らかマシだよ」
どうせ何もしてくれない、持ち出しが増えるだけなら、安い方が良いに決まってる。
神社も基本的に何かしてくれるというわけではないが、それなら値段が安いだけありがたい。
「手元に残る金が増える分だけ、そっちの方がマシだ。
まあ、神社を建てたり神主を呼ばなくちゃならないらしいが。
それも口出ししてくるわけじゃないみたいだから、貴族の領主よりはいい」
あくまで神主などは神社の運営だけが仕事だ。
現地の領主などにあれこれ口出しする事は無い。
「それだけでも貴族よりはマシだよ」
「確かになあ……」
頭領は何度も頷いていく。
色々と思いあたる事があるのだ。
それなりの規模の集団を率いてるだけに、どうしても統治者などとの接点も出てくる。
それらはあまり愉快でもない思い出として、頭領に刻み込まれていた。
「国と縁を切ってどこまでやっていけるか分からない。
けど、何もしてくれない連中とこれ以上付き合うよりはいいと思う」
「まあ、それも確かになあ……」
頭領も国が不要とまでは考えてはいない。
自分達には理解出来ないが、存在する意義はあるのだろうと考えてはいる。
知らず知らず恩恵を受けてるかもしれないとも。
だが、そうであったとしても現実に何らかの助けを得てるわけでもない。
だったら、という思いも浮かんできていた。




