236回 もういっそ鞍替えをしてしまおうかと 2
「なるほどねえ」
話をもちかけられた義勇兵の頭領は、驚いたような困ったような楽しそうな顔をした。
「相変わらずとんでもない話を持ち込んでくる」
「他に持っていく場所もないんでね」
そう言うタカヒロも苦笑している。
「けどなあ。
まさか俺に神社領をすすめてくるとは」
そう言って頭領は呆れたような顔をした。
神社領になる事による利点と問題を考えたタカヒロは、解決策として頭領に話を持っていく事にした。
頭領の所ほどの力があれば、神社領になってもやっていけるからだ。
それだけの力がある。
まだ発展途上ではあるが、廃墟だった町は復興してきている。
物が集まり、人が集まり、それが増大していっている。
元々は密輸の為の拠点であったのだが、数年で町としての形を作りつつあった。
冒険者が定住してるというのも強みであろう。
モンスターの核が取引の中心となり、多くの商人を呼び集めている。
そんな者達を相手にする商売も始まり、ある程度固定された人口を確保していた。
既に数百人という規模を超えて1000人に迫る勢いがある。
国全体からすれば小さなものだが、新興の町としてはずば抜けた規模と成長率を誇ってる。
これだけの規模があれば、下手にちょっかいをかけるようなバカもいない。
もとより、中心となってるのが冒険者である。
それらが中心になってる町は、戦闘集団がそのまま居着いてるようなものだ。
盗賊や山賊なども迂闊に襲撃をかけたりしない。
「これだけの力があれば、神社領でもやってけるだろうからな」
あらためて町の力を振り返ったタカヒロは、自信をもってそう言った。
国の保護がなくても、これならやっていけるだろうと。
実際、これだけの規模の町に攻撃を仕掛けるなら、軍隊でも動員しないと無理である。
「それなら、神社領になってここを仕切っていけるだろうと思ってね」
「面白い話だな」
笑顔で頭領は頷く。
満更でもないようだ。
「けど、幾らなんでも、俺達だけでどうにかってわけにはいかん。
下手すりゃ国を敵に回すんだ。
じゃあやってみよう、なんて気軽には出来ないぞ」
「分かってる」
それはタカヒロも理解している。
「だから、あんたの所だけでやってくれとは言わん。
他も巻き込む」
「どういう事だ?」
尋ねる頭領に、タカヒロは考えを披露していく。
「この周りにある義勇兵の拠点を巻き込む。
これで全部で神社領にする。
そうなれば、それなりの規模にはなるだろ」
「…………はい?」
「もちろん俺も参加する。
それであんたには、俺達をまとめて欲しい」
これがタカヒロの考えだった。
現在、国境沿いには義勇兵の拠点や集落が幾つかある。
これらをまとめていけば、そこそこの強さを持つ事が出来る。
そうなれば国とて迂闊にちょっかいをかけられなくなる。
一つにまとまる事による強さもある。
バラバラの状態にある今のままだと、各個撃破される可能性がある。
それは避けたいところだった。
「折角、密輸経路も出来上がってるんだ。
これを無くしたくもない」
これを保つためにも、ある程度一つにまとまっておいた方が都合が良かった。
国や貴族による切り崩しを防ぐためにも。
それを神社領という形でまとめられるならその方が良かった。
いや、むしろ神社領という方が都合が良いかもしれなかった。




