232回 どこにどんなつながりがあるのか分からないもの
好環境の中にいる。
発展性のある場所にいる。
だからこそ、村の連中との縁を断ち切る必要があった。
そんな所に余計な問題を持ち込むわけにはいかない。
何より子供達への影響もある。
(会わせるわけにはいかんな)
村長とその息子の顔と態度を見て即座にそんな事を思った。
横柄というか傲慢というか、地位に安住してるというか。
自分の立場が絶対だと思ってふんぞりかえってるのがすぐに分かる。
そんな人間など見せるだけでも教育に悪い。
反面教師にして「ああなってはいけない」という見本にするならともかく。
それであっても変な縁を結ぶわけにはいかなかった。
例え接近してきても断ち切る必要がある。
それこそ文字通りに断ち切ってしまおうとタカヒロは考えている。
無駄な悪縁は無い方が良い。
例え隣近所であっても接触はもってはいけない。
村八分などという生ぬるい対応などもってのほかである。
切り捨てて死骸をモンスターの餌にするくらいでないとやっていけない。
「とまあ、そういう事があったんだ」
村に戻ったタカヒロは、仲間を集めて町で起こった事を説明していた。
直接の影響はないかもしれないが、何かあった場合に対処が出来るようにしておく為だ。
知らなければ何も出来ないが、知っていれば多少は何かが出来る。
少なくとも心構えは持つ事が出来る。
こういう事は隠し立てしても意味が無い。
自分の問題だから、他の者には関係がないからと旨の中にしまっておくのも駄目だ。
ちゃんと情報として共有しておかねばならない。
それをしないでいると、後で問題が起こった時に慌てる事になる。
悪いニュースほど真っ先に伝えねばならない、というのは危機管理の鉄則の一つであろう。
タカヒロはそれを実行していた。
「すぐに何があるって事も無いとは思う。
何かあるのかどうかも分からない。
けど、もしかしたら何かしてくるかもしれないから注意をしておいてくれ」
話を聞いてる仲間が頷いていく。
タカヒロの言う通り、すぐに何かがあるとは思ってない。
だが、もしかしたら何かが起こるかもしれない。
そう考えて警戒はしていった。
「それとだ」
「まだ何か?」
「ああ。
この際だから皆にも聞いておきたい」
そう言ってタカヒロは仲間を見渡す。
「……お前らも出身の村で何かあったか?
何か因縁があるなら教えてもらいたい。
こっちに絡んでくる事もあるかもしれないからな」
言われた皆は、ハッとする。
今まであまり意識した事はないが、そういう事もありえるかもしれないと思った。
今のところ問題は無いが、今後どうなるかは分からない。
同郷の者達が問題になる事もありえるのだとタカヒロの話は示している。
それらへの対策を考慮しておかねばならない。
「どうだ?」
尋ねるタカヒロに、仲間は自分達の昔を思い出していった。
何か問題になる事はないか?
断ち切れてない因縁がまだ残ってるのではないか?
記憶を掘り返し、該当しそうな事を頭に浮かべていく。
その後、一人、また一人とあれこれと問題になりそうな事を口にしていった。
全く問題なく生きてる者はそうはいない。
誰もが思い当たる事の一つくらいはある。
それらをまとめて、今後の懸念事項として記録していった。
「ついでに、女房にも聞いておいてくれ。
そっちの方も何かあるかもしれないからな」
その言葉に誰もが頷いていく。
どこにどんな因縁があるのか分からない。
それらが問題となって表れる前に、何かしらの対処をしておきたかった。




