227回 妥当で当然の結果であり、不思議は何もない出来事 2
「それで、どうしたんだいったい」
村長とその息子を叩きのめしたタカヒロは、事の次第を周旋屋のオッサンに尋ねた。
オッサンの方は肩をすくめはしたが、状況の説明はしっかりとしていく。
「新人を連れて来たんだよ。
なんでも、村で人があぶれてるらしくてね」
「なるほどな」
景気はそれなりに戻ってきてるが、攻勢による痛手から立ちなおってない所も多い。
タカヒロ達の出身の村もそうなのだろう。
「それで周旋屋に放り込んで作業員にでもさせるってのかね?」
「みたいだな。
義勇兵でも構わんらしいが」
どこか呆れたようにオッサンは村長と息子を見下ろしていく。
「こっちも人手不足だからありがたいが。
しかしなあ」
「何かあったのか?」
「いや、稼げる仕事を回せって言われてな。
そんなの働き次第だって言ったんだが聞く耳もたなくてな」
「なんだそりゃ」
聞いてるタカヒロも呆れた。
周旋屋での稼ぎは、基本的には信頼と実績で変わってくる。
仕事をしっかりこなせるという確証がない限り、稼ぎが上がる事は無い。
逆に言えば、出身など関係なく、必要な技術を持っていて仕事を丁寧に仕上げるならば、稼ぎは増える。
仕事を定期的に回してもらうようになるからだ。
また、一定以上の技術レベルになれば、相応に難しく、手取りも多い作業にまわされる。
出来る人間であればそれなりの仕事を回される。
そうでない者に稼げる仕事はやってこない。
当たり前の事だが、それすらも理解してないのかと村長達に呆れてしまう。
「何を考えてんだか」
もともとあまり感じの良い人間ではなかった。
無茶や無理を押しつけてくるところがあった。
村の中でならそれでも良かったかもしれないが、ここは違う。
周旋屋は周旋屋の都合で動いてる。
そこに自分達の都合を押しつけても通るわけがない。
「何を考えてるんだ?」
「さなあ」
呆れるオッサンも冷めた目で倒れた村長達を見ていた。
「そもそも、何で俺に声をかけてきたんだか」
「さあな。
こいつらの考えまでは分からん」
オッサンは冷めた調子で応えた。
これ以上関わりになりたくないといった様子だ。
「どうせ、ろくでもない事だったんだろうけど」
「だろうな。
この調子じゃ良い話ってわけでもなさそうだし」
倒れてる村長達が儲け話を持ってくるとは思えない。
面倒を持ってくるだけだろうとは予想が出来る。
倒れてる連中を起こして確かめるのも面倒だ。
「まあ、何か言い出したら教えてくれ。
今度の買い出しの時にでも聞くから」
「分かった。
こちらとしては、このままお帰り願いたいけどな」
心底うんざりしながらオッサンは言った。
こういった人間が旨みのある話を持ってくる事がないのを体験的に知ってるからだ。
客のえり好みをしてはいけないとはいうが、商売相手を選んでいかないといずれ厄介事に巻き込まれる。
それが分かってるからオッサンは、村長達が二度とあらわれないように願った。
実際、村長達の要望はふざけたものであった。
それが判明するのは、翌月町への買い出しに出かけた者が帰って来てからである。




