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【完結】異世界転生してモンスターを倒してそこそこ成功したので故郷に帰ったら、幼なじみを奴隷として買う事になった  作者: よぎそーと
第9章

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224回 何よりも貧しいのは心であるのだろう

 産児制限などによる強引な手段ではなく、発展がもたらす自然な出世率の安定。

 無駄で無茶な負担をかけるよりも健康的で人間味にあふれる方向性。

 それを目指し、なおかつ今はまだ必要な新しい命をはぐくむべくタカヒロは女房のところへと向かっていく。

 女衆としての仕事と、母親としてのつとめを何とか両立させて大変そうではある。

 そんな女房のがんばりには素直に賞賛と感謝を向けていく。

 そんなミオに更に夜のおつとめまで求めるのは申し訳ないところではあった。

 幸いな事に元奴隷の女房は拒絶する事無くタカヒロの求めに応じてくれた。

 嬉しくなったタカヒロは、明日も仕事をがんばろうと思いながら、目の前の労働に勤しんでいく事にした。

 勤労は美徳であると思いながら。



 そんな女房を見ていて、ふとミオがどうして奴隷になってしまったかを思い出す。

 それは貧困が原因とは決して言えないものがあった。

 いや、貧困や生活苦など全く関わってこない。

 あくまでミオ以外の家族が自分達の利益のために、娘を奴隷として売り払ったのだ。

 その事を思い出すといまだに腹が立ってしまう。



 別に家族の絆だとかを持ち出すつもりはなかった。

 そんなものがどれ程意味のないものなのか位は理解していた。

 これも前世の日本で見聞きした事が前提である。

 例え親子家族であっても、そこに絆があるというわけではない。

 たいていの親子や家族はそこに何らかの繋がりが、心の紐帯があるものだろう。

 だが、それが絶対にあるというわけではない。

 全く無い、それどころか血を分けた家族を人間扱いしない者だっているのだ。



 児童虐待や家庭崩壊などがそれを物語っていた。

 例え家族であっても決して仲良くやっているわけでない事を示している。

 ミオの家もそうだったのだろうとタカヒロは考えている。

 だからこそミオを売り渡すことに躊躇いも何もなかったのだろう。

 ミオが奴隷商人に引き渡される所に居合わせたタカヒロは確信している。

 その時のミオの家族の表情や態度からそう察していた。

 元々娘は売りに出していたような連中だ。

 それで稼いでるような奴らだった。

 それもまた奴隷のような境遇に陥る者が出て来る理由であろう。



 貧困、あるいは豊かさとは無縁の理由がそこにある。

 おそらくではあるが、ミオの家族のような連中は例え裕福であっても娘を売り飛ばしていくだろう。

 上流階級の場合は政略結婚の道具とするのだろうか。

 あるいは、上流階級だからこそ、より高値で娘を売り飛ばすかもしれなかった。

 より上位の貴族や裕福な商人などに。

 あるいは裏街道の実力者にだろうか。

 それらは、普通に奴隷として売り飛ばされるよりも悲惨な境遇であるかもしれない。

 そして、これらを躊躇いもなく行えるだろうと思わせるのが、ミオの家族であった。



 倫理観や道徳、そもそもの気質や性質、人間性といった部分がどうかなってるとしか思えなかった。

 人間性が貧困というのだろうか。

 人としての何かが欠けている。

 あるいは、何かが間違って接続されてるような気がした。

 それらは決して何か良いものを世の中に提供する事は無い。

 害悪と混乱と停滞と衰退をもたらしていくだけであろう。

 調和や発展などそこにはあるはずがない。



(そういや、あいつらどうしてるんだろ)

 ふと思う。

 もうずっと帰ってない故郷の村。

 帰る理由もないが、そこにいるはずのミオの家族は今何をしてるのかと思った。

 気になると言えば気になる。

 その動向が気になるからだ。

 もし自分達に絡んできたらと思うと、考えるものがある。

 自分勝手で他を省みない連中である。

 自分の都合や利益をとるために何でもやるような奴らだ。

 モンスターの領域への攻勢を主張した連中と、根本的な性質が似ていた。

 もし自分達に絡んできたらと思うと気分が悪くなる。

(こっちに来るとは思えないけど……)

 妙な胸騒ぎをおぼえる。

 もし万が一こちらにやってくる事があったらどうするか?

 そんな事を考えていった。



「……何か悩み事?」

「ん?」

 抱きしめてるミオに尋ねられる。

 そこで、自分がミオを腕の中に抱えてる事を思い出した。

 子供が寝静まり、そろそろ自分達も寝ようとしていたところだ。

 そこでミオに声をかけ、今夜のこれからについて尋ねていた。

 その流れで抱きしめていたのだが。

「まあ、ちょっとな」

 適当に応じてタカヒロはミオを伴って布団へと向かっていく。

 今更家族の事など持ち出すつもりにはなれなかった。

 口に出しても不快感を抱くだけでしかない。

 それよりも、これからの未来のためにもう少し作業に勤しまねばならない。

「お前がいてくれて良かったなって思って」

 そう誤魔化しながらミオを横たえていく。

「何よ、今更」

「そうだよな、本当に」

 苦笑しながらタカヒロはミオに覆い被さっていった。

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