222回 我が子を奴隷にしないために
(それと)
将来の事を考えるにつけ、常に思う事がある。
何があっても絶対にそうはさせたくないものが。
(奴隷だけは出させないようにしなくちゃな)
子を持つ親になってあらためてそう思った。
極端に酷い扱いをうける奴隷はそう多くはない。
高い金を出して購入するのだから、奴隷の所有者とてそう無理はさせないものだ。
大半の奴隷は、自分の意志による辞職が出来ない長期雇用者といったものではある。
それでも低賃金(衣食住の保障のみ)で働かされるので、良い待遇とは言えないが。
また、命令されれば逆らえないというのは、やはり辛いものがある。
そんな状況に陥らないようにしておきたかった。
その為の道筋も示しておきたかった。
奴隷に陥る理由は様々だが、一番は困窮であろう。
食い扶持を用意する事が出来なくなる。
これが一番の理由になる。
そうなればどうしても人を減らしていくしかない。
人が一人減れば、その分だけ食料などに余裕が出来る事になる。
そのついでに、金が入れば儲けものだ。
だからこそ、奴隷商人に家族を売るという事が行われている。
また、これでもまだ温情のある措置と言える。
売る事も出来ないとなれば、あとは捨てるしかない。
それもままならないなら、殺すしかない。
こうした間引きが実際に行われる事だってある。
それに比べれば、まだしも生き残れる可能性のある奴隷は、温情ある措置になるかもしれなかった。
その境遇がそれほど悪くなければであるが。
そうならないようにするためにも、養える範囲で人を留めておかねばならなくなる。
だからと言って産児制限のような事はしたくはない。
そうしないで済むためにも、何か良い方法はないものかと考えていく。
結局は生産量を増やすしかないのだが、だとしてそれをどうするかである。
出来れば適正な範囲で人口が推移すれば良いのだが
(そんな上手くはいかないか)
こればかりはどうしようもない部分がある。
人の意志や気持ち、また子作りの制限などもそう上手くいくものではない。
その気がなくても授かる事もあれば、求めても得られない場合もある。
人の意志である程度制御出来ても、完全に思い通りになるわけではない。
なので、ある程度は諦めるしかなかった。
だが、どうにか出来る事もある。
それだけはどうにかして達成していきたかった。
その為に必要なのは、やはり豊かさであった。
正確にいうならば、豊かさを成り立たせる環境と言うべきであろうか。
人が賢くなる、という事でもある。




