221回 村だけではなく、その先の事も考えて
その後も子供達が続々と学校に通うようになり、教育は進んでいく。
物覚えの善し悪しの差はあるが、初歩的な読み書きと計算は出来ていく。
そのおかげで、色々とはかどる事も増えてきた。
一番大きいのは、必要な事を書き留めておけること。
これにより、仕事を教える時の手間がかなり省けるようになった。
また、数字が分かるようになって数を書き留める事も出来るようになる。
それだけでも村全体での仕事の効率が変わってきていた。
読み書き計算などが出来るというだけで結構大きな違い出てきていた。
この調子でもう少し難しいこともおぼえてくれれば、将来の不安は無くなっていく。
タカヒロの感覚でいうところの、小学校6年生くらいの能力になる。
この世界であるならば、それでも充分な学力水準となる。
国や地域についてのそれなりの知識。
最低限の理科・科学の知識。
そして漢字を使った読み書きと、ある程度複雑な計算。
これらをこなせる能力があるならば、一般庶民としては充分だった。
出来ればそれ以上の学力も欲しいところだが、それを求めるのは酷ではある。
教える側にもそれだけの能力が求められるし、教材だって必要になる。
それを揃えるのは容易ではない。
そもそも前世の日本における中学校段階の知識を教えるのも難しいものがある。
この段階になると、学科毎の教師が求められる。
それは、それだけ専門的な知識が求められるという事だろう。
複数の教科を教える事が困難であるという事の証しである。
現段階のような、教師一人で全教科を教えるというわけにはいかなくなる。
いずれはそういう事が出来るようにしたいが、それは将来への目標となるだろう。
さすがに今の段階では無理だとタカヒロは判断していた。
それでも小学校卒業くらいの学力・知識があれば生活でそれほど大きな支障はない。
仕事に必要な知識や技術はあらためてそこから教えていけば良い。
早くその時期が来るように願っていく。
子供達にそこまで成長してもらいたいという思いもある。
また、切実な理由として労働力が足りないという現状がある。
子供に仕事を押しつけたくはないが、
そして、将来の目標をタカヒロは記していく。
今の段階では実現が無理な事を、でも将来必要になるであろうことを。
それらをとにかく書き残していく。
自分が忘れても問題がないように。
書き記した事をどうにかして実現出来るように。
自分がいなくなったとしても、後の世の誰かが引き継いでくれるように。
他人任せであるが、それも仕方ないと割り切る。
どうしたって寿命がそのうちやってくる。
それまでの間に全てを実現出来るとは思えなかった。
やらねばならない事は多岐にわたり、それらを実現するには資本も人手も足りない。
周りにいる者達を引き込んでいく事も考えるのだが、それが上手くいくかは分からない。
小さな村に外部からの人間を招き込む事への懸念もある。
それが無用な騒動を起こす原因になる事を恐れた。
それよりも、着実な発展の方を優先したかった。
また、同時に思いつく様々な科学技術や機具についても記していき始めた。
前世の日本にあった様々な道具。
それをこの世界でいつか実現されるように。
それらが自分達の子孫の生活を潤すように願って。
発展・開発・研究に目印や目標を与えていくために。
必要な技術や資源や機具が揃えば作り出せるようにしておきたかった。




