220回 村の学校第一期生
子供との接し方をどうにかこうに作り上げていった頃。
村での出産にも目処がついていった。
町で産婆の補助をしていた者が戻ってきて、実際に子供を取り上げはじめていった。
これで出産の度に町に向かう必要もなくなった。
これもまた大きな前進になっていった。
タカヒロの子供も手習いを始めるくらいの年齢になったのも同じ頃合いだった。
村で一番最初の子供という事もあり、何をやるにしても一番最初になっていく。
教師役の者が文字の書き方から教えていき、計算なども伝えていく。
集会所で始まった教室で、最初の教育が始まっていく。
どことなく遊び感覚で行われるそれは、まずは順調なすべりだしを見せていった。
それと同時に紙や筆や墨が必要になっていく。
そして、習った事の成果を感じさせるために、様々な本も集められていく。
単に文字をおぼえるだけでは何の意味もない。
それをおぼえる事で何が出来るようになるのかを知らねばならない。
集会所に設置された本棚と、そこに並べられる本。
幼児でも読める者から、大人が読むようなものまで少しずつ集められていく。
子供の教育用に並べられたそれらは、いつか子供達が目を通すようになるのを待つように静かに鎮座していく。
そんな教室を見てタカヒロは、また一つ考えるものがあった。
墨や紙を自分達のところで作る事が出来ないものかと。
これらも作る事が出来れば生活の足しになるかもしれない。
消耗品なので、生産出来ればそれなりの稼ぎにはなるかもしれないと思えた。
集会でそれを提案したタカヒロは、制作・製造関連技術を持つ者に相談していく。
すぐにどうにか出来るとは思わなかったが、可能かどうかくらいは確認するために。
幸い、原材料と設備があればどうにかなるだろうとは言われた。
ただ、それらを揃えるのが一苦労であるとも言われた。
しかし、これで村の収入源を更に確保出来るようになる。
まずは紙の原材料となる植物を植える事から始めようと考えていった。
こうして村の中での作業が増えていく。
その分モンスター退治に出る事が出来る者が減っていく。
田畑も果樹園も教育も、それらに割くだけの人間が必要だ。
その分モンスター退治に出る人間が減るのは当然である。
それらは村の守りに残る者達と兼任という事にしていくしかない。
それでも人数不足を感じてしまう。
あと何人か人が増えればと。
無いものねだりをしても仕方ないので、今いる人数でどうにかするしかないのだが。
あとは子供達が育つのを待つしかない。
現在、一番の年長が6歳。
成人まであと9年。
先はまだまだ長い。




