218回 何よりも苦戦する相手 3
子供との接し方について、父親達があれこれ悩んでる。
それを見てる女房達は、
「本当にどうしようもないわね」
と笑っていた。
彼等は彼等なりに必死なのだろうというのは分かる。
あれこれ悩みながらも親として頑張ろうとしてるのも。
だが、
「そんなに気張らないでいいのに」
だいたいの女房達の感想はこういったものだった。
とりあえず父親達にそれほどの期待はなかった。
子供をあやす事が出来るほど器用な連中ではない。
どうすりゃいいのか悩んで困って四苦八苦してるのを見てれば分かる。
なので、上手く接してくれるとは思っていない。
そこまで求められないのも分かってる。
基本的にモンスターと戦うか、何かを作ってるかに集中してるのだ。
他の事に手が回らないのは分かっている。
子育てまでやれとはとても言えなかった。
ただ、子供達に接していればよい。
それだけが望みであった。
不器用ながらも一緒にいて子供に接していてもらいたい。
子供も子供で父親には近づいていこうとする。
その時に、ちょっとだけ抱き上げたりしてくれればいい。
頭を撫でてくれればいい。
それすら手こずるのは分かってるが、そういう事をしてくれればいい。
まずは子供に慣れてくれればと思ってしまう。
「まあ、それがなかなか出来ないんだろうけどねえ」
「大変よね」
「でも頑張ってるわよ」
「そうそう」
「がんばれ、お父さん」
そう言って女房達は笑っていく。
不器用ながらも父親であろうとする旦那を微笑ましく思いながら。
今日も帰って来たら、近寄ってくる我が子におたつきながら相手をするだろう。
昨日も一昨日もその前もそうしていたように。
「やっぱり難しいのかな、男からすると」
「嫌いじゃないけど苦手みたいだしね」
「あんまり子供に接してないからねえ」
「慣れもあるしね」
それでもなんとか子供と一緒にいようとする。
だからだろうか、子供達もなんだかんだで父親にすりよっていくのは。
おそらく今日も繰り広げられるだろう、家庭内における寸劇を女房達は楽しみにしていた。
モンスターよりも難しい相手に四苦八苦してる旦那の姿を。
そんな旦那になんだかんだで飛びついていくわが子達を。
その期待通りに、この日も家に戻った父親達は、我が子を相手に苦戦する事になる。




