217回 何よりも苦戦する相手 2
「どうすりゃいいのかねえ……」
ちょっと手が空いた時には、仲間にそんな風にぼやいていく。
望んで作った子供であるが、その子供にどう接したものかと悩みに悩む。
そんなタカヒロに他の者達は苦笑するしかない。
「いやあ、大将も父ちゃんしてるんだなあ」
「大変ですね、新米父ちゃんは」
「がんばってください。
俺らの中じゃ一番先頭に立ってるんですから」
「気張ってくれや、大将」
父親業に四苦八苦してるタカヒロに、温かくも何ともない励ましがかけられる。
そんな仲間にタカヒロは、
「お前らだって同じだろ」
と反撃をした。
どこの家も子供が生まれて状況が激変している。
女房にした奴隷といちゃつく暇もあればこそ、子供の夜泣きや我が儘に引きずり回されている。
大変だとは分かってはいたが、それでも予想を超える苦難の連続でもある。
泣いた笑った喧嘩したで、とにかく手におえない。
そんな子供に振り回されて、どの家もてんやわんやである。
特に野郎共は子供相手では無力であり、まともにあやす事が出来る者はいない。
そんな中で、もっとも最初に子供に恵まれたタカヒロは、子育てにおける先頭走者であった。
だからこそ、他の者達の見本になってしまっている。
良い意味でも悪い意味でも。
「俺らは大将を見て色々学んでますから」
「おかげで助かってます」
「今後もよき指標、よき目標となってください」
「失敗から大変大きく学ばせてもらってるっす」
こんな事を言ってくる仲間に、どれだけ拳骨を叩き込んでやろうと思った事か。
その気持ちを可能な限り押し殺し、ため込んだ鬱憤をモンスターに叩き込んでいく。
心持ち威力があがったような気がする一撃で、モンスターは次々に沈められていく。
相も変わらずスコップをふるうタカヒロは、この頃鬼気迫るものがあった。
それでも野郎共は我が子とどう接するかを考えてはいる。
子供を育てるには何が必要でどうしたら良いのか。
これと真っ向から向き合っていた。
必要な技術を習得した者もいるくらいだ。
そうした者とあれこれ話し合い、ああすれば良いのか、こうしたら良いのかと考えていく。
だが、知識や情報があっても、それを活かせるかどうかは別になる。
目の前にある生の子供のしてる事が、聞き及んだ状態と同じなのかどうかも分からない。
とにかくあれこれ考えて悩みながら接するほかない。
母親の方も大変だと思うが、父親達もかように苦労を重ねている。
それでいて結果が出せてないのだから切ないものがあった。
「どうしたらいいのかねえ」
「分からんですな」
「何かきっかけでもあればいいのかもしれんが」
「本当に面倒だよな」
口々にぶつくさいいながら、目の前にあらあれるモンスターを倒していく。
今日も経験値と核を稼ぎ、家族を養う原資を手に入れていく。
それと同時に、経験値で育児関連の技術を身につけようかどうかも考えていく。
他にあげるべき生産系の技術はあるのだが、それを一旦置いてしまおうかと。
そう思う程に彼等は子育てに難儀しており。
それくらい真剣に向き合っていた。




