215回 国内事情の悲喜こもごも
それでもどうにか国内に入り込んでるモンスターを退けられてるのは、タカヒロ達義勇兵の活動による。
でなければ、国境を越えたモンスターが国内を荒らし回っていただろう。
以前にも増して義勇兵による活動は大きな影響をもたらしている。
モンスターが増えた事を聞いて国境付近まで移動してくる者達がいたのも大きい。
おかげでモンスターの間引きも大分進むようになっていった。
こうして移動してきた義勇兵達は、国内に存在していたモンスターの巣で稼いでいたのがほとんどだ。
蔓延るモンスターを駆除して生計を立てていたが、それに見切りをつけてのものである。
どれだけ規模が大きくても、一定以上の数にはならないのが巣を作ってるモンスターである。
大規模な集団が本気になれば一気に刈り尽くす事になる。
そうならないように、ある程度の制限をもうけてる所すらある。
そうした仕切りは、その場で活躍する義勇兵集団でも大手がしてる事が多い。
無論、稼ぎは大手が独占していく事になる。
その為、零細集団などはある程度以上にはなれない傾向にあった。
この状況に嫌気がさした者達が、続々と国境へと向かっていった。
零細集団からすれば、好き勝手してる大手と縁を切る事も目的だった。
活動規模の大きさを盾にしてあれこれ指図してくる連中への反感は大きい。
そういった連中への反発は以前からあった。
だが、国内ではどこも稼げる額がほぼ決まってしまっていた。
下手に他所にいっても、その地域の稼ぎを荒らす(分け前が減る)事になるので嫌われる。
なので、迂闊に動く事も出来なかった。
その状況が一変した。
国境地帯は慢性的な人手不足ではあったのだが、それに拍車がかかった。
今ならば歓迎はされても排斥はされない。
これを良い機会ととらえた者達は続々と移動を開始した。
面白いもので、これで困るのが国内のモンスターの巣で食っていた大手である。
彼等からすれば、都合良く補填に使える零細などがいなくなるのは大問題だった。
普段の活動では必要なくても、人数が必要なときに使えるので重宝していた。
大手からすれば便利な道具である。
当然ながら、零細集団などの都合は全く考えずにいたので、そうした事も嫌われる要因になっていた。
大手はそれを、「稼ぎを分けてやるんだから、こんなありがたい話はないだろう」と思っていたのだが。
そんな勝手な思い込みが通じるわけもなく、大手以外の者達はこぞって国境へと向かっていった。
慌てたのは大手である。
流出が始まるとあの手この手での引き留めが始まった。
今までより良い条件を提示したり、出ていったら報復するなどなどである。
当然そんなものを聞くような者達はいない。
どんなに良い条件も、それが履行される事など無いと誰もが思っていた。
今までそういった約束反故が当たり前だったからである。
また、報復というのも全く気にしてなかった。
活動してる地域ならともかく、それ以外の場所でどうやって手を出してくるのか?
そこまで影響力を持ってる集団なんぞ存在しない。
威張れるのは、あくまでも活動してる地域だけである。
中には、「ここで勤まらない奴が他で通じるか!」とかいう事もあったという。
ここで活動がまともに出来ないから出て行くのだが、それを理解してないか故意にねじ曲げている。
また、ここから出てやっていこうという気概があるから出ていくのである。
それだけの根性があるなら、多少の困難などものともしないだろう。
何より、その場に居座って、利権と言えるものにしがみついてる連中よりは度胸があるだろう。
むしろ、他で通じないのは威張り腐ってる大手の連中であろう。
そんな事もあり、国内各地から義勇兵が国境へと流れこんできていた。
狩猟制限のない地域で彼等は暴れ回った。
今まで以上に稼げるとあって、やる気を存分に発揮していった。
何せ、倒しても倒しても次の日になればモンスターは復活してるのである。
これほどやりがいのある場所は無い。
やる気にあふれた彼等は、国境が安定するまで荒稼ぎをしていった。
そして、国境が安定してきた頃には、他の義勇兵達と共に国境を越えて進出。
そこで自分達の領域を作る事になる。
中心となったのはタカヒロがそそのかした義勇兵集団ではある。
だが、その彼等が躍進する原動力になったのは、国内から移動してきた義勇兵達だった。




