213回 こんな状況を作ったのも、結局あれが原因である 2
攻勢派が残した負担とは、大きく言えば人員の減少と借金である。
どちらも無理に無理を重ねたモンスター領域への侵攻がもたらしたものである。
兵士として人を集めたせいで、それらが潰えた穴を埋める事が出来なくなっている。
また、兵士を集めて軍勢を編成する事で物資もそれを集める金も浪費した。
これにより国は、立て直しが難しい状態に陥っていた。
兵士の方は、基本的には余剰となってる各家庭の末っ子などで構成されていた。
家族からは口減らしを目的として。
また、本人もまともに扱われない今の家庭から逃げ出すために。
国が用意した兵士という待遇は、こういった者達にとって渡りに船であった。
だが、実際にそれらが壊滅してしまうと、その穴埋めに四苦八苦する事になる。
攻勢そのものが現時点における最大の愚策であるのは言うまでもない。
これに合流させるために、国境に貼り付いてる部隊すらも引き抜かれたのは既に述べた通りである。
その穴を埋めるために、通常ならば各家庭の末っ子があてられる事になる。
これは国境配備の軍勢を保つためによく行われている。
常にモンスターと戦い続けてる国境の部隊は、損耗もそれに応じて大きい。
なので、兵士の募集は常に行われてると言ってもよい。
これらが口減らしの手段として用いられてるという面もある。
だが、こうして前線はどうにかこうにか形成されていた。
もちろん、これらはさほど損害が大きくない場合の手段である。
もし、モンスターからの攻撃が思いのほか激しく、早急に大量の人員が必要な場合は、義勇兵が募集される。
それなりの技術レベルに到達してる者達を集めるならば、これが一番確実で早い。
義勇兵の方も、安定した待遇を得る為に応じる者もいる。
兵士の選抜に漏れて義勇兵になった者達は、だいたいこれに乗る事が多い。
こういった形で前線は保たれている。
なのだが、今回の攻勢はこういった面を壊滅させていた。
本来ならば補充のために集められる各家庭の末っ子などが、攻勢の為に集められたからだ。
加えて、戦力強化のために義勇兵も集められていた。
これにより、質量共に在野からの徴募が出来なくなってしまっていた。
例え金に余裕があろうとも、それが出来る者がいないならば意味がない。
販売される商品と同列に扱うわけにはいかないが、ここでも品薄状態に陥っていた。
これによりモンスターの脅威を押しとどめる事が難しくなった。
仮に人がそれなりに残っていたとしても、それらをすぐに集める事は出来なかった。
これは攻勢のための軍勢を集めるために国庫の金を用いたからである。
国の主流を握っていた攻勢派は、持てる権限の全てを使って攻勢を進めていった。
その為に国庫の金を惜しげもなく費やした。
必要な政策や公共事業などすら擲ってである。
それらは良くて凍結、だいたいにおいて廃止や廃案にされていった。
そこまでして費用を捻出して攻勢に向かっていったのである。
それどころか、新たな費用捻出のために借金や増税すらしようとしていたくらいである。
これらの法案は国王が認可しなかったために全て廃案となった。
だが、もし通っていたならば、今頃国は更なる混乱に陥っていたであろう。
それでも国家予算の大半と、これまで蓄えられてきた国庫の金はほぼ全てが用いられていった。
攻勢派が一掃された後に政権に戻った者達は、この現状を知って唖然呆然としたほどだ。
それほどまでに攻勢派は後先考えずに、ひたすら攻勢だけを考えて行動していた。




