21回 異世界との不思議な共通点
翌日。
なかなか寝付けなかったせいか、起きるのがいつもより遅れた。
仕事を抱えてるわけではない二人には、今のところこれで問題になる事は無い。
時間帯のせいだろう、普段より閑散とした食堂で食事をとって今日やる事をこなしていく。
ただ、待っていたサキが、
「遅いじゃない。
何やってたのよ」
と苛立っていた。
ミオの生活に必要なものを見繕ってくれと言われて、律儀に待っていたらしい。
「こっちは仕事休んでんだからね」
「はいはい。
それじゃ、やらかした事の償いとしてがんばってくれ」
仕事というか、モンスターとの戦闘を休まねばならなかった理由をあらためて示しておく。
原因がどこにあるのかをはっきりさせ、なぜこうなったのかをはっきりさせておく。
さすがにそれを無碍に出来るほど人間が腐ってはいないようで、
「くそぉ……」
悪態を吐きながらも黙っていく。
その間に預金残高から金をおろしてミオに渡す。
「とりあえずこれでおさまる範囲で揃えてきてくれ」
「え、でも」
渡された金を見て驚く。
出されたのは5万円。
いくら何でも多いのではと思える金額だった。
「服とかその辺りも含めてだよ。
着の身着のままで出てきたんだから、色々物いりだろ。
遠慮するな」
「……うん、それじゃ預かるね」
そう言ってミオはサキにつれられて町へと向かっていった。
あとは任せてタカヒロも今のうちにやっておける事をこなしていく。
義勇兵の仕事で必要になるのは当然武器と防具である。
これらの手入れはしっかりしておかないと命に関わる。
使ってる武器や防具が戦闘中に壊れたら、あとは死ぬしかない。
消耗品なども補充しておかねばならない。
また、一緒にいく仲間との打ち合わせなどもある。
単独行動してるならともかく、少し遠出をするとなると、こういった事も必要となる。
普段一緒の仲間は、今モンスター退治に出向いてるのでこれは出来ないが、個人装備の手入れはやっていく。
とはいっても、よく使うものは周旋屋の方で仕入れて売り出してるので、そこで買えばいい。
武器や防具の修理はさすがに工房に持ち込むしかないが、それも大した手間ではない。
一日あればたいていの事は終わってしまう。
遅めの食事を取って町に出て、武器や防具、補修が必要な道具を職人に渡していく。
戻ってくる間は予備の武器や道具を用いていく。
また、これ以上の使用が難しいほど傷んだものは新しいものに交換していく。
(しかし……)
買い物をして物と金をやりとりしながらあらためて思う。
(この世界、言葉だけじゃなくて通貨も円なのか)
異世界なのに妙に日本との共通点が多い。
なんでだろうと思うが、答えは分からない。
だが、困る事は無いのでこの状況をありがたく受け止めていく事にする。
むしろ、新たにおぼえなおす必要がなくて助かると、前向きに考えていった。




