209回 自分達の強みはこういうところかもと気づいたかも
(とは言っても、何を売り出したものか)
そこが問題である。
この先モンスターを倒して稼ぐという事が続けられないのは分かってる。
その代わりになるものが必要になるが、今のところそれらしいものはない。
今後、果樹園などが上手くいけばそれが売りに出せるだろうが。
そうなる可能性はまだ見えてこない。
仮に果樹園が軌道にのったとしても、それが村を保つ事が出来る程の稼ぎになるのかも分からない。
出来るならもっと何か大きな産業が欲しいところである。
(山から鉱石が出たり、温泉が噴き出たりするならいいんだけど)
鉱山があれば、それだけで潤う。
温泉は観光地への道筋を作ってくれるかもしれない。
だが、そう簡単に事が運ぶわけもない。
そういった幸運に頼るわけにもいかない。
確実に手に入る何かを売り出さねばならないのだ。
(でも、何がある?)
現時点では存在しない。
だが、いつまでもそのままというわけでもない。
可能性として山に作る予定の果樹園。
また、可能であるならば生け簀で川魚を養殖出来ればとは思う。
しかし、捕らぬ狸の皮算用でしかないこれらは、あくまでそうなればいいという希望でしかない。
そもそもとして、村においてこれらが消費される可能性の方が高い。
外に売りに出せるほど収穫できるのかも分からない。
もっと何か売れるものが欲しかった。
(働きに出てもらうしかないか?)
それなりの技術をもった者達を外に働きに出させる。
いっそ、町かどこかに居場所を作って住み着く事も考えていく。
だが、そのためには相応の技術が必要になる。
それを村で培えるかどうか。
そもそもとして何が必要になるのかも分からないのだ。
それが分からないうちにあれこれ教育をしても仕方が無い。
無駄な知識や技術を身につけさせ、何の役にも立たない無駄に終わる事は避けたい。
(いや、逆にこっちに来てもらうとか)
学校をこちらでもよおし、それを売りにするというのも考える。
最低限の読み書きや計算は誰もが求めている。
それをこちらで教えていき、その対価を得る事も考える。
しかし、庶民にそこまでの出費が出来るかどうか。
村に生徒を集めるとなれば、その分の宿泊費用などもかかる。
庶民にそこまでさせる事が出来る者はそうはいないだろう。
寄宿舎生活というのは、基本的に富裕層の出来る贅沢である。
(だったら、学校を町に作って教師を育てるとか……)
その方が現実的に思えた。
どのみち、最低限の知識や教養というのは必要になる。
寺子屋のような形で子供に手習いをさせる親が多いのも確かだ。
学校を開設すれば通う生徒はそれなりに確保出来るだろう。
もっとも、そこにどれだけの金を支払ってくれるかは分からないが。
(けど、それもアリか?)
今のところ売りに出せるものとすればこれくらいしかない。
モンスター退治で蓄えた経験値で一般教養などのレベルを上げていく事は可能だ。
それを利用して教員を養い、義勇兵が立ち上げていっている町に学校を作る。
それはそれでありえる商売ではあった。
(知識を売り物にするか)
あるいは技能や技術を身につけさせる。
訓練を施す。
他にない自分達の強みかもしれないと思えた。
(ちょっと考えてみるか)
他と同じく上手くいくかは分からない。
だが、それもいけるかと考えていった。




