207回 ようやく田畑に手をつける事が出来た
子供相手の忙しい日々が過ぎ去っていく。
その後も次々に産まれる子供達の世話でどの家庭も大変な事になっていく。
押し寄せるモンスターも数多く、おかげでたくさん稼ぐ事も出来た。
そんな原因を作った攻勢推進者達に怨嗟の声と呪いの念を送りながら、村の発展のための一手を作っていく。
まずは田畑の復活。
そして田畑を取り囲む防壁の作成。
これらが始まっていった。
雑草もそうだし、雑木まで生えてる田畑。
それは村総出で手をつけねば片付かないものと見られていた。
まずはモンスターや野生の動物を排除するための土塁作りになっていく。
今までも少しずつ進めていた堀作りと土嚢による壁作りが本格化する。
冬の作業がそれ一つで終わったほどである。
その甲斐あって、畑を取り囲む土嚢はとりあえず形になっていった。
あとは田畑の雑草や雑木をどうにかして、土の状態を変えていくだけである。
数年でどうにかなるかもしれないといったところだ。
「先は長いな」
「ですね」
「まったくだ」
「まあ、やらねばならんからのお」
いつまでも食料の全てを外部に頼ってるわけにもいかない。
ある程度で良いから自給自足を……というのは村の者達にとっての悲願である。
それに一歩前進した。
「農作業の方はどうだ?
出来るのか?」
「そっちの技術を伸ばしてる奴が充分なところまで上がってる。
たぶん、どうにかなるだろ」
「でも、最初の数年は様子見だろう。
さすがに最初から上手くいくとは思えない」
「そうだろうな。
そこは大目にみていこう」
それでも、前進には違いないのだ。
まだ荒れ果てたままの姿を持つ田畑だが、それもいずれはまともな姿を取り戻すだろう。
その為の第一歩を今年は成し遂げた。
来年には、邪魔になる雑草や雑木を取り除き、土を剥き出しにする。
そして、今まで作ってきていた堆肥などで土を調えていく。
そこかしこで取られる雑草や落ち葉などは、集められて積み重ねられ、堆肥にする材料となっている。
「来年は、ここにある雑草や雑木を堆肥の材料にしないとな」
「そうだな。
材料には事欠かんな」
「やりがいがあるなあ……」
「かなりきついっすよ」
そう言いつつも、全員は夏が終わってからの作業に向けて、やる気を漲らせていた。
「あと、斜面の方はどうなってる?」
「木炭と材木作りのために結構整備されてきてる。
あと、苗木も幾つか植えてみた」
「モンスターと動物除けも作ってみた。
でも、実際に歩き回って駆除しないと駄目だろうな」
「とにかく、上手くいくまでちゃんと見てないとな」
「子供を相手にするみたいだな」
「似たようなもんだ。
上手くいくまでは目がはなせん」
「まったくだ」
言いながら、皆で笑った。
なんだかんだで手間がかかる。
だが、成果は少しずつだが出てきている。
ここに移住してきてから何年も経ったが、ここまで進む事が出来た。
ほとんど何も無かった所からやってきたにしては上出来だろう。
実際、彼等はよくやっていた。
押し寄せるモンスターを退けながら。
普通の人間では絶対に無理である。
それを成し遂げるだけの戦闘力を培って来た彼等は、控えめにいっても良くやってる。
「そのうち、うちから出荷も出来るようになればいいけどな」
「果樹園のやつをか?」
「そうなればいいっすけど」
「まあ、まだ何年も先の事だ。
果樹が実を付けるようになるまで時間がかかる」
「それまで俺達が生きてればいいけど」
「モンスターがいるからなあ」
「がんばらないといけないな」
まだ色々と手間はかかるが、やり始めた事がどうなるのかを見るまで死ねない。
そんな事も考えながら、一同は今後に目を向けていった。




