202回 未来への布石
「先の事だけど、国境の向こうを目指してみないか?」
「なに?」
言われた義勇兵の頭領は、素っ頓狂な声をあげた。
「何を言ってんだ?」
「まあ、聞いてくれ」
そう言ってタカヒロは自分の考えを述べていく。
全ては今後の、あるべき攻勢に向けての布石とするために。
攻勢そのものは間違ってない。
だが、時期が悪すぎた。
それについての説明から始まっていく。
「どのみち、モンスターは倒していかなくちゃならない。
それに、国の中に留まっていても、これ以上の発展はない」
「だからモンスターに突っ込んでいくのか?」
「そうなる」
危険は大きいが得る物も大きい。
それだけの力があるならば、得られるものはとてつもなく大きくなる。
「国の中はもう貴族のものだし。
俺達が何かを手に入れるなら、外に出向くしかないし」
「そりゃあそうだが」
無理して手に入れるとしたら、国境近くの放棄された場所。
タカヒロ達が入りこんだ廃村や、義勇兵達が根城にしてる駐留所などくらいしかない。
それではどうしても限界が発生する。
それを超えるために、いずれは外に出ていくしかなくなる。
「すぐには無理だろうけど、そのうちに必要になるだろうさ」
「そのうちって、どれくらい先だ?」
「それはわからないけど……。
たぶん、何十年も先だろうとは思う」
「おいおい、その頃には俺達生きてないぞ」
「もちろんだ。
でも、子供や孫は生きてるだろう」
「まあ、それは……」
「その頃に足踏みしないように、色々と道筋をつけておきたい」
無理して外に出る必要は無い。
だが、そう思った時に踏み出せるような状態にはしておきたい。
選ぶのはその時の子供達であるが、彼等にそれなりのものを提供しておきたい。
その為には、今からある程度の事はしておかねばならない。
考え方の教育も含めて。
「だから、攻勢が駄目だって考えじゃまずいんだ」
「ふむ……」
それはどういう事なのかと頭領は気になった。
タカヒロの話にのまれてるとも言える。
しかし、先々の事について何が必要なのかも気になる。
仮にも一つの集団をあずかる立場として、今後については考えてはいた。
その道筋をつける役に立つかもしれないと思ってもいた。
「つまり、どういう事だ?」
先を促し、タカヒロの言葉を求める。
言われるまでもなく、タカヒロは思う所を述べていった。




