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【完結】異世界転生してモンスターを倒してそこそこ成功したので故郷に帰ったら、幼なじみを奴隷として買う事になった  作者: よぎそーと
第9章

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201回 個人的にはそう思っている

(とはいえ)

 押し寄せるモンスターをどうにか撃退し終えてからの夜。

 少し冷静になったタカヒロは、改めて考える。

(攻勢そのものは悪くはないんだがな)

 他の多くと違い、その部分にはそれほど反対はしていない。

 ただ、やるべき時期が間違っていたとは思う。

 もう少し準備に時間をかければ。

 というより、国内をもう少しでも発展させられれば、と思う。

(そうすりゃ、侵攻も出来るんだろうけど)



 何にせよ様々な事が足りてなかった。

 軍勢もそうだし、それを支える国力もない。

 出来るのは現状維持がせいぜい。

 こんな状態でモンスターの領域に突っ込んでいくのが無茶である。

 やるにしても、地域を少し確保してそこを守れば良かったのにと思う。

 あるいは、国境に展開する部隊の補強。

 それで国境を完全に封鎖し、モンスターの侵入を阻む事が出来ていれば。

(開拓出来る場所が増えるのに)

 それはほぼ確実だと考えられた。



 もともと国境近くのこの地域は、それなりに平野が多い。

 もはや言い伝えでしかないが、かつては田畑が拡がっていたとも言われている。

 モンスターを阻む事が出来れば、そういう状態に戻す事も出来たかもしれない。

 そうなれば、侵攻する以上の成果を得る事が出来ただろう。

 平野に戻った部分を田畑にするまで時間はかかるが、得られる成果は大きくなる。

 それまで多大な負担がかかるだろうが、ほぼ確実な成果が見込める。



 あるいは国内のモンスターの巣を潰していけば良かった。

 そうすれば、侵攻するよりは安全に、それでいて確実な成果を得られただろう。

 モンスターの脅威がなくなれば、それだけ安全性が増していく。

 モンスターがいて手が出せなかった耕作可能地を取り戻せたかもしれない。

 鉱山を奪取出来たかもしれない。

 侵攻には足りなくても、それなりの兵力は集めていたのだ。

 使い方を間違えなければ、それなりの成果も得られていただろう。



 それら全てを、攻勢という事に用いた。

 数十年に渡って続いた流れがそうさせたのだろうか。

 何の意味もない、得る物もない、利益が見込めない事に、人も物も費やされた。

 そして、残ったのは膨大な借金のみ。

 物資の強制買い取りのために国庫の金はかなり危険な所まで使われていた。

 それを補うだけでも相当な負担になる。

 もし、無理してでも集めた軍勢や物資を上手く用いていれば、この負担もやがては何らかの実りになっただろうが。

 今はそれも「あの時ああしてれば」という事にしかならない。

 それが無駄という事はない。

 過去に起こった出来事を振り返り、「あの時ああしてればどうなったんだろう?」と考えるのは、今後に用いる事が出来る。

 同じ事が二度繰り返される事は少ないだろうが、似たような状況や経緯になる事はありえる。

 その時に、どうやっていたら上手く出来たのか、という思考が役に立つ。

 これの放棄は、ただの思考停止であり、それこそ無駄の極地でしかない。



 振り返ってみて分かる事もある。

 集めたものを上手く用いれば、よりよい結果が出ただろうということ。

 そして、攻勢をするにしても、それは今でなくて良かったこと。

 攻勢という考え方、モンスターの領域への侵攻は間違ってない事。

 間違ってるのは、状況を考えずにただ攻勢にだけ拘ったこと。

 それは思考停止、あるいは思考の放棄である。

 ただひたすら攻勢にだけ拘って他の事を考えなかった。

 ただそれだけが悪手であった。



 そして、攻勢を否定する現状もまた悪手である。

 これが国是のように国の動きを縛るような事があってはまずい。

 もしそれだけの力を得た時にも攻勢を渋るようになってしまっては意味が無い。

 どのみち、モンスターの領域には切り込んでいかねばならない。

 国内をととのえるのが先であるが、それが終わってからも外に出るのを拒むようではまずい。

 安全圏の確保のためにも、出来るならばモンスターの領域を掃討し、人の領域を増やさねばならない。

 長い時間をかけた事業になるだろうが、それも視野にいれねばならないだろう。

 この国はモンスターとの接触面に存在するのだから。



 同時にそれは国力増強の可能性を秘めている。

 人間相手でないから、進出するのを阻むものはない。

 人類の領域奪還の大義名分も立つ。

 他国にあれこれ言われる筋合いはない。

 別に大国になる必要はないかもしれないが、他国から余計な干渉をされないためにも国は強い方がよい。

 何も覇権国家にならなくても、領土拡大が目的にならなくてもよい。

 国の安全のためにも、強さは必要というだけだ。

 その機会を自ら捨てるような状況は避けてもらいたいものだった。



 攻勢に出るのを主張する必要は無い。

 だが、攻勢という手段を捨てるような事はしない。

 そうならないように、何かしら出来る事はしたいと思った。

(チラシでも配るか?)

 そう考えて苦笑する。

 そういう小さな一歩も必要だろうが、どれだけ効果があるのか分からない。

 全く何の効果もないわけではないだろうが、どうにも微妙なものだ。

 それに、今の時期にそんな事しても袋だたきにあうだけだろう。

(やるなら、もうちょっと上手いやり方を考えた方がいいか)

 やるならば、である。

 そこまでする義理も義務もない。



(でもまあ、これも投資か)

 自分には直接関係はないかもしれない。

 だが、自分の子供やその子供、さらにその子供といった子孫に影響があるかもしれない。

 それに備えて、多少は努力はしておこうかと思う。

 世のため人の為なんて事はこれっぽっちも考えない。

 あくまで自分と自分の縁者の事を考えてである。

 それ以外となると、面倒を見きれない。

 それが人の限界でもあるだろう。

 聖者や君子になりたいならともかく、タカヒロはそんなつもりもないのだし。

(ま、やれる事があれば何かしておくか)

 そう考えるのがせいぜいである。

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