199回 事の顛末 3
なお、今回の馬鹿げた愚行であるモンスター領域への攻勢。
これで利益を得た者達もいるにはいた。
しかし、それは国に良い影響を与えはしなかった。
利益を得たのが犯罪組織がほとんどだったのだから。
タカヒロが義勇兵集団をそそのかして密輸をさせたように。
同じような事を考えた犯罪組織は、こぞって密輸をして闇市を開催した。
非合法な物品流通経路を作り上げたこれらは、表の商会に勝るとも劣らない経済団体となった。
もともと、麻薬や武器、人道や人命・尊厳を無視した本当に非道な奴隷売買などを行っていた者達である。
密輸程度で今更怖じ気づくような事はなかった。
むしろ、自分達の得意分野を活かす絶好の機会と、持てる力の全てを投入していった。
結果、今まで手がけてこなかった日用品などを手広く販売していった。
目に付かないように運ぶので手間はかかるが、払う手間賃を補うほどの利益を出していった。
取り締まる側もこれらのほとんどを見て見ぬふりをするのが大半だった。
治安担当者であっても、生きていくのに様々な物資が必要になる。
それを手に入れるために、彼等も闇市などを利用するしかなかったのだ。
わざわざ取り締まって、自分の生活を追い込む馬鹿はいない。
たとえ職務があっても、生活にはかえられない。
そもそも、生活を守るために治安担当者は活動するのである。
現状において治安を、平穏な生活を保つには闇市にすがるしかない。
そう考えれば、治安担当者達のお目こぼしは理にかなってると言えた。
悪いのは、こうなる原因を作った攻勢派である。
そんなわけで、大手の商会に迫るほど幅広く活動をした結果、犯罪組織は急速に成長。
攻勢が終わったあとも、巨大化した組織と蓄えた財を使って影響力を保っていった。
これが今後、国に悪い影響を与えるようになっていく。
当たり前だろう、もともと犯罪行為を生業としてる者達である。
それが大手を振って表を歩くようになってるのだ。
誰がそれを喜ぶというのだろうか?
この原因を作った事も、攻勢派が疎まれ嫌われ、徹底的な弾圧を受ける原因になっていく。
そういった状態ではあるが、何とか国はギリギリの所で保たれた。
問題は山積みになってしまったが、再建にとりかかれるようになっていった。
がたがたになってしまった国内を立て直すのはかなり難しいが、このまま衰退に向かっていくよりは良い。
さしあたってタカヒロは、買い出しに出て来た町が、少しは賑わいをみせはじめているのにその可能性を感じていた。




