178回 その後も続々産まれる命達
とにもかくにも集会所作りとなった。
会合を開くにも、子供達を集めて手習いをさせるにも便利である。
その他は、女衆から求められている細々とした改修をしていく。
水場と排水溝、それに給水設備など。
改善出来ればしておきたいものもある。
あとは、水を溜めておくための大きな水桶。
火災対策も兼ねて、これを幾つか作る事にした。
少ない人手でどこまで出来るか分からないが、春までに出来る事をしておきたいものである。
そして、冬の間に新たに3人の子供が生まれてきた。
おかげでそこかしこから泣き声が上がってくる。
タカヒロの所は既に通り過ぎた事だが、三つの家にとっては初めての事である。
慣れない事にどの家も大騒ぎになっている。
そこは一年だけであるが先輩であるミオが色々と助言をしていったりした。
また、去年に続いて手助けを多少の報酬で行う事で、それなりの補いにはなっていった。
とはいえ、さすがに一気に3家族の世話をしなければならず、手助けもかなり難しい。
しかもその一つがトシノリの所なので、村というか集団の運営にも支障が出ている。
「いや、こんなに大変だとは思わなかった」
集団一番の年配者であるトシノリは、苦笑しながらそう漏らした。
子供の夜泣きに起こされて大変だという。
おかげで、仕事の方も全力であたる事が出来ないでいる。
「しょうがないさ。
まずは子供と嫁さんの世話をしていてくれ」
「すまんのお。
そういってくれて助かるが」
タカヒロとて去年通った道である。
同じ境遇の者を非難する事は出来なかった。
また、去年は助けられた側である。
今年はタカヒロが助ける側にまわる番というだけだ。
「でも、オッチャンがいないと色々と滞るよ」
「そうかそうか」
笑うトシノリは、
「まあ、そこは頑張ってくれ。
俺がいないだけで滞るのも問題だからのお」
「まあ、そうなんだけどね」
「それに、いつ誰がいなくなるか分からん。
いなくなってから困るような状態にはしないようにしておかんと」
「ああ、まったくだ」
その通りである。
組織としてこのままで良いわけがない。
少しずつであるが、トシノリのやってきた事も引き継いでいく。
また、代役になれる者も育てていく事になる。
年長者としてあちこちで活動してきたトシノリだ、抜けるとなればそれなりの対処が必要になる。
簡単にはいかないがやらねばならなかった。
一人いなくなるだけで崩壊するような体制は避けたかった。
とはいえ、そこは腐っても年長者。
やってる事の一つ一つは些細なものだが、結構多岐にわたる。
そして、それらがそれなりに重要なものだったりする。
気づいて手直しを施していった結果そうなったと本人は言う。
それに気づくだけの人生経験がなせる業だろう。
代わりを務めるのは簡単にはいかない。
(俺より年下なのに)
前世の分と合わせれば自分の方が人生は長いと自負してる。
なのだが、この世界で生きてきたトシノリに及ばぬところがある。
それが活きてるのだろう。
トシノリのやってきた事にはそれが感じられる。
(かなわんな)
タカヒロはそれを苦笑しながら認めていった。




