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【完結】異世界転生してモンスターを倒してそこそこ成功したので故郷に帰ったら、幼なじみを奴隷として買う事になった  作者: よぎそーと
第8章

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173回 子供が生まれた万歳では終わらない 3

 とにかく子供が生まれるというのが一大事なのはよく分かった。

 これからこれも含めて色々とやっていかねばならない。

 村を運営するというのはこういう事なのだとも悟った。

 仕事だけではない。

 生活に関わる部分も考えていかねばならない。

 当たり前だと思っていたが、まだ足りなかった。

 人は産まれて死ぬ。

 その部分への考慮が足りなかった、浅かった。

 それはもっと手間がかかり、面倒で、どこまでもついてまわる事であった。

 これについて考えていかねばならない。



 外から人を引っ張ってくるなら難しく考える必要もないだろう。

 だが、自分達で子供を産んで育てて、それらを含めた日常生活をこなすのだ。

 それは予想すらしてない苦難の連続になった。

 何せ、何も出来ない赤子を育てていくのだ。

 楽なわけがない。

 新人教育とは訳が違う。



 素人の新人とて、本当に何も出来ない無能無力というわけではない。

 人としての思考や行動は出来る。

 足りないのは技術であり、それは学べばどうにかなる事が多い。

 しかし、赤子は違う。

 本当に何も出来ない、言葉を喋る事も出来ない。

 無力で親が手をさしのべないと何も出来ない。

 2歳3歳と育っていけば変わってくるが、まだまだ子供である事に変わりはない。

 そこから大人になるまで色々と教えていかねばならない。

 教えるだけではなく、情の部分も気にかけねばならない。

 相手は物を言わない道具ではない。

 心を持った生命体なのだ。

 接し方を間違えたら、それが破綻のきっかけになりうる。

 知識や技術だけではなく、人として大事な触れ合いを忘れるわけにはいかない。



 そんなこんなを産まれてから10年以上続けていかねばならないのだ。

 その苦労たるや、想像を絶するものがあった。

 赤子の段階での世話だけで大変だと思ってるタカヒロだが、あらためてそれを考えて呆然とする。

 親としてやっていけるのかと不安になる。

 そして、それでも子供を育てている世間の多くの親に感動をする。

 新人としてやってくる者達は、そういった事を経た者達なのだ。

 無力な彼等であるが、それでも一人の人間として生きていけるようになっている。

 そうなるまで育てた親の苦労は察するに余りある。

 新人の教育など、子育てに比べれば些末な事と思える。

 実際、大分楽だと今のタカヒロは思える。



 だが、投げ出したくなるほど大変ではあっても、辞める気にはならなかった。

 確かに苦労はする。

 子供は可愛いだけでは済まない。

 その世話に綺麗事は通じない。

 ちょっと目を離すだけで体調を崩すし、危険な事もしてしまう。

 周りの事を考えずに、自分の都合で泣き叫ぶ。

 排泄物だって出すし、それを拭っていかねばならない。

 何から何まで手間がかかる。

 可愛いからと抱きしめて楽しんでるわけにはいかない。

 ぬいぐるみでなく、生きてるのだから。



 こんな手間のかかる事を抱えていかねばならない。

 人の営みを続けていくというのは、こういう手間を抱えていくという事なのだろう。

 そして、まだ大変な部分の、人生の半分しかまだ見てない。

 やがて死ぬ時にはどうするのか、という部分がまだ見えてない。

 それもおそらくは大変な手間がかかるだろうとは思う。

 それもこれから抱えていかねばならない。

 仕事という、糧を得る部分だけ見ていれば良いわけではない。

 本当に産まれてから死ぬまでの全てを含めて運営されるのが、人の居る場所なのだから。



(まいったな)

 その事を産まれてきた子供によってつきつけられた気がした。

 本当に大変な事をしてしまったと思う。

 自分達の居場所を求めて廃村までやってきたが、そこにある苦労はまだ終わりそうもない。

 それらが既に存在する町の方がまだ楽に生きていられたのではないかと思う。

 今更であるが、そんな事も考える。

 しかし、だからといって戻ろうとは思わなかった。

 わざわざここまでやってきたのだ。

 出来る所まであがいてもがいて生きていこうと思った。



 さしあたっては、仕事を終えて家に帰って子供の顔を見る事にする。

 手間がかかり、面倒が多く、大変なものである。

 ミオと違って朝から晩まで触れあってるわけではないが、それでも大変なものだと分かる。

 だが、その大変さがまた楽しいのだ。

 おかしなもので、苦労が多いのに、その原因になってるのに子供というのは可愛いものである。

 楽しいとは思わないが、面白いとは思う。

 遊びではないから楽しさはない。

 だが、仕事を成功させる時のような、一つの事に打ち込むことのおもしろさがある。

 真剣さというべきだろうか。

 どうしても真剣にならざるえない事が面白い。

 生きてるという実感がある。

(今日も夜泣きするのかな)

 寝るに寝れない日はまだ続く。

 だが、そんな日々も、どこか面白く感じていた。

 好んで苦労などしたくはないが、この負担は決して誰にも譲りたくなかった。

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