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17回 思いもがけない素顔に驚くという定番な展開 3

「なんだと……」

「え……」

「嘘だろ……」

「え、同じ人間?」

「じゃあ、やっぱり奴隷……?」

「そんなの買えるだけの金があったのか?

「そういや、あいつ金貯めてたな」

「まさか、この為……?」

「なんてこった……」

「そういう事か……」

 そんな声があちこちから上がってくる。

 それを聞いて、タカヒロは実に面倒な事になってきたと感じた。

(くそ……くそ……!)

 周りの連中の声に怨嗟が混じってるのを嫌でも感じる。



 女っ気のない連中である。

 売春婦の所に足繁く通う連中もいるが、それも一夜限りの関係だけで終わる。

 女と特定の関係を結んでる奴などほとんどいない。

 いつ死ぬか分からないから、先を見越した付き合いがしにくいというのもある。

 いつ死ぬか分からないから、稼ぎをその日の内に使ってしまうのもある。

 何にしても刹那的なために継続的な関係を作るのが難しい。

 男女間の付き合いの場合は特に。

 そんな所に、今回の発言である。

 色めき立つのも当然である。

 更に。



「あと、何度も言うけど奴隷だからな。

 手を出したらどうなるか分かってるだろうね」

 サキの爆撃はまだ続く。

「そうだ、奴隷なんだよ……」

「なんだと……」

「おい、って事は……」

「あの娘、あいつが好きに出来るって事か?」

「それに手を出したら……」

「取っ捕まるのか……」

 奴隷は主人の命令には逆らえない、従うしかない。

 そして奴隷は所有物である。

 所有者以外が手を出したら、間違いなく咎められる。

 このあたりは財産への侵害として扱われ、これはかなり厳しく取り扱われる。

 このあたりは貴族を始めとした上流階級や富裕層の思惑も働いてる。

 先祖代々であろうと、一代で築いた新興であろうと、資産を所有してる事にかわりはない。

 そして、所有してる資産への侵害は、こういった者達にとっては(そしてどんな底辺の庶民にとっても)重罪である。

 これに甘い顔をしたら、資産の所有を覆す事になる。

 だからこそ、様々な資産、そう呼ぶのも躊躇われる所有物であっても、それへの侵害は厳罰になる。

 奴隷も例外ではない。

 むしろ、奴隷はその際たるものと言える。

 直接的な労働力として扱われる奴隷は、富を生み出す源と言える。

 その扱いはかなり慎重なものとなる。

 何せ人間である。

 権利などが認められない物扱いされてるとはいえ、酷使すればすぐに潰える。

 大金をはたいて手に入れて、その分を回収する事もなく潰えては意味がない。

 その奴隷を傷つけるというのは、充分資産への侵害となる。

 人としての尊厳とはかけ離れた理由ではあるが、奴隷はこれでその立場を厳重に保障(というか管理)されている。

 なので奴隷に下手に手を出せば、相応の報いがやってくる。

 つまり、絶対手を出せない。

 それが確定している。



「くそおおおおおお!」

「なんでだああああ!」

「俺だって、俺だってえええ!」

「うがああああああああああ!」

「クソが、クソがあああああ!」

 そこここから絶叫が上がっていく。

 ほとばしるそれらの根源を言葉にすれば、

「なんであんな可愛い娘が、あんな奴の物なんだ」

「だったら俺も奴隷でも買ってこようか」

「でも、そんな金がない」

「ちくしょう、酒や博打や女に注ぎこまなきゃ、今頃俺だって」

といったものになる。

 浪費してしまった今までの稼ぎと、それで得られたであろう可能性を考えてしまっていた。

 自業自得であるのでそれを誰かにぶつける事も出来ない。

 いや、八つ当たりであるのは分かっていてもそれらをぶつけてやりたいと思っている。

 しかし、それをやれば捕らえられてそれなりの処分を受ける。

 だからこそ、絶叫をほとばしらせていく。

 こみ上げてくる何かを発散するために。

 だからといって、これまでの生活をあらため、明日から少しは稼ぎを残していく者はいない。

 ごくわずかな例外はいるだろうが、長く続いた生活習慣を変える事が出来る者は少ない。

 それもまた分かるから、彼等は嘆いてもいる。

 おそらく、これまで通りに何も変わらないでいる自分を想像して。



「ちくしょおおおおおお!」

「あんな娘と、あんな娘と!」

「やるんだろ、絶対やるんだろ!」

「ふざけんなああああああああ!」

 絶叫はまだ続く。

 そんな中、タカヒロはミオの手を引いて部屋へと戻っていった。

 それを見たサキが、周りの嘆きをうるさく思いながらため息を吐く。

「本当にどうしようもねえな」

 事情は聞いたが、それでもミオを奴隷として従えてるタカヒロも。

 それを羨んで嘆いてる周りの連中も。

 どうにも救えないと呆れた。

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