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【完結】異世界転生してモンスターを倒してそこそこ成功したので故郷に帰ったら、幼なじみを奴隷として買う事になった  作者: よぎそーと
第7章

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166回 その背景はいかに? 4

「でも、それだけでまた戦争なんてなるか?

 多少余裕が出て来たかもしれないけど、それだけでモンスターの所に突撃かけるとは思えないけど」

「普通ならそうだろうな。

 お偉いさん達も30年前のままだったら、また30年前が繰り返されただろうさ」

 それがそうなってないのは30年の間に色々な変化があったからだろう。

 30年前は世間の下っ端だった連中も、今では年配者だ。

 家庭や職場でもそれなりの地位をしめてるものだっている。

 そうでなくても古参としてそれなりの権威や立場をもってる者だっている。

 そんな連中がやかましく叫べばそれなりの影響力は出てしまう。



 加えて、ここに貴族内での動きも同調してしまっていた。

 詳細は庶民に把握出来るわけではないが、勢力争いなども絡んでるらしい。

 少しでもモンスターを退け、領土を拡大して権勢を増大させたい者は多い。

 また、様々な派閥や主張を統合する、主導権を握りたいという思惑もあるようだった。



「国境でモンスターを食い止めるって言っても、意見が一致してるわけじゃない。

 各担当地域ごとに派閥争いや勢力争いがあるようだ」

 予算配分から今後の作戦展開まで。

 様々な面での衝突が発生する。

 巨大組織につきものの無意味で下らない、害悪にしかならない足の引っ張り合いがそこにはあった。

「そんな状況を無理矢理まとめあげるために、攻勢をかけるって考えになったらしい」

 守るだけではなく、戦争を仕掛ける事になれば派閥争いなんてやってる場合でもなくなる。

 目的に向けて、派閥ではなく軍の部隊として行動する事が求められる。

 そうなれば、指揮権を握った者が全てを主導出来るようになる。

 当然ながら、これは軍事行動に限った事ではなくなる。



 戦争とは国家の力を用いて遂行するものだ。

 相手がモンスターだろうと人間だろうとこれは変わらない。

 その為には政治においてもある程度の統一や統合は求められる。

 ここで攻勢の主導権を握れば、軍事と政治における指揮権を得るに等しい。

「それを狙う貴族もいるって事だろう」

 そういう連中にとっては、無謀極まりない戦争も政治における優位性を得る道具に過ぎないのだろう。

 それが国家を、自分達の立ってる足場を危うくするとも考えてない。

 あるいは、そんな事すら関係なく、ただただ暴れ回りたいと考えての事なのかもしれない。

 もしくは、自分が主導権を握る、他の者達の上に立てるという事だけを求めてるのかもしれない。

 理由がいかなるものであるのかは当事者にしか分からないが、今回の攻勢が国にとって利益になる事はないのはほぼ確実であった。



 それを後押ししてるのが、30年前の叫び声である。

 理念があって叫ばれる声ではない。

 熱病にうかされて出て来るうわごとと大差ないものだ。

 結果がどうなるのか、どこで止めてどうやって利益に結び付けていくのかなど考えもしない。

 あるのは、自分が口にした事を実現させたいという我が儘だけであろう。

 恐ろしい事に、それが貴族や武家の思惑と重なり国を動かしていってしまっている。

 止める声もあるようだが、それは全体の流れを食い止めるほどにはなっていない。



 これらを推し進めてる最大の原因は、なまじ国力が回復してしまってる事だった。

 力があるから、今までよりは力が増大してるから。

 だから攻勢に出よう、今度は勝てる────そんな声が大きくなっている。

 確かにここ数十年で国力は上昇し続けてきたかもしれない。

 しかし、それらは大事な一点を見逃してる、あるいは都合良く無視している。

 ここ数十年で最高潮だとしても、それは60年前に戦争を起こした時期と比べてどうなのか。

 かつて勝てると踏んで挑み、見事に敗退したその頃の国力と比べてどうなのか。

 国力を背景にした攻勢を主張する声に、この比較はただの一つも存在しない。



「流れて来る話を聞くに、そんな調子らしい」

「なんだかな……」

 オッサンの話を聞き終えたタカヒロは頭を抱えるしかなかった。

 予想によって足りない部分を穴埋めした話である。

 現実と食い違ってる所は多々あるだろう。 

 それにも関わらずタカヒロは、オッサンの紡ぐ言葉に嫌になるほどの説得力を感じてしまった。

 当たらずしも遠からずといったところではないかと思う程には。

「どうにかならないのかねえ」

「出来たらとっくにやってるんだがなあ」

 悲しいから町の一角で嘆いていても世の中の、政治の動きを変える事は出来ない。

 ため息だけが虚しく吐き出されていく。



(これから子供も生まれるっていうのに)

 明るくもない今後の展望を聞いて、目出度い出来事も色あせてしまう。

 産まれてくる子供が過ごしていく時代が、どうにもならないほど暗いものになりそうで気が滅入った。

(何が出来るかねえ……)

 己の手が伸ばせる範囲で、せめて多少の対策はしておきたい。

 そう思って頭を使っていく。

 しかし、妙案なんてのはこれっぽっちも浮かんでこなかった。

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