160回 今までの成果を教育に持ち込んでいく
回数をこなしていくうちに、新人達の動きも変わっていく。
レベルの上昇をともなわないので、そこにはどうしても限界はつきまとう。
しかし、慌てふためくところがなくなり、躊躇いがなくなる。
次はどうすればいいのか、という疑問が次々になくなっていく。
それが動きを確実に良くしていった。
迷いがないというのは大きい。
時にそれは油断や不注意、見落としに繋がりもするが、同時に最適化を示すものでもある。
決まった相手に決まった手段を用い続ける事が出来るならば、これは決して悪い事では無い。
無駄を極力省いて成果をあげることが出来るのは理想型の一つであろう。
比較的弱いモンスター相手という限定はあるが、それが出来てるというだけでも良い傾向だった。
死ぬ可能性を減らす事には繋がってるのだから。
あとは、レベルが上がるまで無理や無茶をしない事である。
そのレベルアップについて、タカヒロは技能の限定。専門化によるレベル上昇を推奨していった。
汎用性はないが、短期間での能力向上が見込める。
まずは使ってる武器に限定した成長をさせていった。
それで早期の戦力向上を目指す。
でなければ、成長の頭打ちになってしまう。
たとえ限定されていても、ある程度戦える能力があれば、より強いモンスターと戦う事も出来る。
そうすれば、経験値も稼ぎも跳ね上がる。
危険な賭にもなるが、多少なりとも成長を早めるならばこうした方が良い。
タカヒロ自身もそうしてきた。
なにはなくとも戦える能力を────それがタカヒロの方針でもあった。
新人達はそれに応えてよくやっていた。
まだレベルも上がってないにも関わらず、モンスターを誘い込み、撃退していっている。
稼ぎはまだまだ満足のいくものではないが、最低限の生活が出来るくらいにはなっている。
あとはこれを毎日繰り返していけるかどうかで今後が決まる。
欲をかいて無茶をして死ぬか。
地道に今やってる事を繰り返し、より高い所へと昇っていくか。
それが出来るかどうかは、彼等の気持ち次第となる。
さすがにタカヒロもそこから先はどうにもならない。
「けど、このままいけば、来年までにはそこそこ戦えるようにはなってるはずだ」
あくまで予想だけどとことわりはいれている。
だが、それでも比較的有望な未来を口にする。
景気づけのためのでっち上げではない。
実際にこのままいけば上手くやっていけるだろうという予測である。
それを聞いた新人達は顔をほころばせる。
そんな彼等は、タカヒロの予想外の事を口にした。
「だったら、軍隊への採用もありますかね?」




