159回 新人を率いながら今後について考える
新人達と共に、近場にあるモンスターの出現地帯へと向かう。
ここ最近ではさほど出没数が多くもなく、新人に仕事をさせるには手頃となってる場所だった。
町に居る時に使っていたモンスター退治用の陣地に入り、撃退の準備をしていく。
事前にやり方を伝え、モンスターの核を砕いていく。
それらが呼び水となってモンスターが出て来るのを待つ。
幸い、モンスターはほどほどにやって来てくれた。
経験のない新人達であっても、囲んで叩きのめす事が出来る。
戦闘技術などろくろく身につけて無い連中なので、これが一番有効な手段になる。
手にした武器でとにかく死ぬまで攻撃させ続けた。
効率は悪いが、まずはモンスターと戦えることをしっかりとおぼえこませる。
強い相手ならともかく、そこそこのものならさして怖くない事を理解させる。
なにより、仲間と共に取り囲めばどうにかなってしまうという事も。
成果そのものはさして多くはなかったが、まずはモンスターに慣れてもらわねばならない。
新人にとって大事なのはそこである。
技術をおぼえるのも大事だが、モンスターへの無駄な恐怖を持たない事。
油断は出来ないが、対処出来ないほどではない事を。
恐怖によって立ち向かう事を拒否するような事にならないようにせねばならなかった。
数日もするうちに新人達もそれが分かるようになっていった。
頭で理解するのもそうだが、それを肌で感じてきていた。
確かに怖いし、攻撃が当たれば大怪我では済まなくなる。
なのだが、取り囲んでしまえばどうという事は無い。
腕が伴ってなくても、相手より数が上ならばどうにかなる。
その事をまず新人は学んだ。
そして、平野ではなく、構築されてる罠の中におびきよせる事も学んでいった。
土嚢を積み上げて作った陣地の他にも、モンスターをおびき寄せるための場所が幾つかある。
たいていは、穴を掘って作った窪地であるが、そこにおびき出す事が出来れば、簡単に多数のモンスターを撃退する事ができる。
比較的安全に多数のモンスターを倒す事が出来るので、新人もそれなりの成果をあげる事が出来た。
ただ、そうやってやってきたモンスターの数は、タカヒロからするとかなり少ない方だった。
もともとモンスターを倒し続けて出現数が減ってるというのもあるだろう。
それにしても数が少ない。
新人の懐をそれなりに潤すくらいにはあるのだが。
(大分減ってきてるんだな)
今まで倒してきた成果であろう。
このあたりも大分落ち着いてきたようだった。
(あと少しすれば、このあたりも村が出来たりするのかな)
モンスターが少なくなれば、そうした動きも出てくる。
廃村が復活したり、工作に適した土地が開拓されたり。
そうやってモンスターによって失った場所を取り戻していく。
簡単にはいかないが、少しずつ回復している場所もある。
最前線であるモンスターとの接触面では戦闘が絶えないだろうが、その一方でこうして人が取り戻した場所もある。
まだどうなるか分からないが、ここがそうなるなら早めにそうなってほしいとは思った。
同時に、このままいけば自分達もモンスターで稼げなくなる日が来るかも、とも思った。
モンスターとの最前線がどうなってるかは分からないが、そちらの活躍が実を結んでるならそういう日も来るはずである。
モンスターが蔓延る地域はそれでも広大で、完全に駆逐する日は遠いだろう。
しかし、この近隣に流れ込んで来るモンスターが減少すれば、モンスター退治も仕事にならなくなる。
そうなる前に、食い扶持を確保する必要があった。