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157回 役目や役割なども自然と変わっていく

 忙しい日々が続く。

 モンスター退治と村の運営との両立をしていかねばならず、楽が出来る状況ではなかった。

 夏場は基本的にモンスター退治が主になるとはいえ、それだけに専念というわけにもいかない。

 特に全体の運営をするタカヒロは、帳簿とのにらみ合いも含めて村の運営をせねばならない。

 時にはモンスター退治を休まねばならない事にもなっていった。



 そういった場合の稼ぎをどうするかという問題も発生している。

 村の運営はそれだけで稼ぎが出るというものではない。

 なので、モンスター退治が出来ないとその分だけ日当が減る。

 これについては、モンスター退治をしてきた者達が少しずつ金を出す事になる。

 村の運営が滞れば全体の損失にもなるからだ。

 これについては誰も異論がなく、それなりの金を出す事にしていた。

 とはいえ、そこに胡座をかくわけにもいかない。

 運営のためと言って事務作業に没頭していては、負担が大きくなりすぎる。

 そうならないように、可能な限り事務作業にあてる時間を減らしてはいた。

 まだ村の運営にそれほど手間がかかるというわけでもない。

 今の規模ならば、兼業でやっていける。

 だが、更に規模が拡大したらどうなるか分からない。

 その時にはモンスター退治の一線から退く事になるだろう。

 その事もタカヒロは考えはじめていた。



 そして、女衆の方でも変化が始まっていた。

 産婆の技術を上げる者を決めた事で、作業の配分が変わってきていた。

 炊事・掃除・洗濯などの技術を上げていく者達とで差が出てしまうからだ。

 まだ現時点では大きなものではないが、それもいずれ変わってくる。

 その為、作業の配分をどうしても変えていかねばならない。



 仕事の専門化が始まっていた。

 規模が大きくなり、必要な技術を持つ者が求められていく。

 その為、全員がほぼ同じ作業をするというわけにもいかなくなっている。

 まだ小さな集落、小さな集団であるが、それでも全員が同じというわけではなくなっている。

 妊娠・出産がそれらを促していた。



 とりあえず分かった事は一つ。

 田舎のスローライフなんてのは何処にもないという事だった。

 そんなものは、作業を他に任せる事が出来る者の特権であろう。

 さもなくば、作業用のロボットなどが実用化されてからの話になるだろう



 タカヒロとミオは当事者だから余計に忙しい。

 日に日に大きくなるお腹と、母体の体調の管理。

 医療技術を伸ばしてる者がそれを検査しているので多少は安心が出来る。

 しかし、初めての事なので心配がついてまわる。

 仕事で外に出なくてはならない時もあるので、その間に何かあったらと考えてもしまう。

 さすがに考え過ぎだとはタカヒロも思うのだが、こればかりはどうしようもない。

 そんな中で、ミオは新たな技術を身につけていった。



「出産介助?」

 家に戻ったタカヒロは、ミオに告げられた新しい技術に驚いた。

「え、どうやって?」

 経験値をどうやって得たのかが疑問だった。

 日々の様々な活動でも手に入れることは出来るが、お腹が大きくなるにつれ、ミオの行動は少なくなっている。

 周りが無理をしないようにと気遣って、多少は身の回りの世話をしにきてくれるからだ。

 多少体を動かしはするが、ミオの行動はかなり減少している。

 経験値が貯まるほどの活動をどうやってしたのか不思議だった。

「それがね……」

 答えは意外なものだった。



 お腹を抱えていても何もしてないというわけではない。

 医療技術者に注意するべき事や、やっておいた方が良い事を聞く事もある。

 ミオの方から聞く事もある。

 そうしたやりとりが自然と学習のような事になり、経験値に繋がってるという。

 他にも、周りの女衆から生活についての注意事項などを聞いたりするのも経験値につながる。

 もちろん見聞きしただけでなく、実際に行動していく事が経験値につながっていた。

 それらを用いての技術獲得である。



「私がここで一番の経験者になるわけだしね」

 そう言って、大きくなってるお腹を撫でる。

「だから、経験者がまず産婆さんになろうかなって」

「そっか」

 ミオの言葉にタカヒロは微笑ましくなる。

「それじゃ、お前も産婆さんに?」

「なった方がいいかなって思ってる」

「分かった」

 その意志を極力尊重したいとは思った。

 否定する理由も無い。

「なら頑張ってくれ」

「うん、頑張るよ」

 頷くミオ。

「けど、まずは自分の事だ。

 今はお前と子供の方が大事だからな」

「はいはい。

 分かってますよ、お父さん」

 少しからかうように「お父さん」と言う。

 まだ慣れてないタカヒロは、少しばかり赤くなった。

 とりあえず、タカヒロの呼び方はいつの間にか、兄ちゃんからお父さんに変更されていた。



 夏も半ばを過ぎた頃の事である。

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