155回 今後のために色々と変更を 3
「まあ、やらなくちゃならないしな」
「うちも、そのうち生まれるだろうし」
「出来るだけ早くそういうのも作りたいところではある」
村に戻って集まってもらった者達に説明をすると、賛同の声が上がってくる。
下手に反対する者はいない。
いたとしても、
「だとして、何を削る。
無闇にやったら、必要なものを手放す事になる」
というようなものばかりである。
必要なのは分かるし、他の事業(というには大げさな表現であろうが)を削るのに反対するわけではない。
村の今後を考えて、何を削っていくのかを慎重に決めるべきという観点からの意見である。
実際、これが一番悩む所であった。
同席してもらってる女衆も同じような事を言う。
もっともこちらは自分達が腹を痛める事もあってか、出産への対応を強く望む声が強い。
「出来るだけ早く作って欲しい」
「それに産婆さんも」
「このままじゃ安心して産めない」
どれもごもっともな意見である。
特に要望が強いのが産婆さんの有無である。
村から町までは遠い。
産気づく前に町に出向き、そこで出産を待つという事にはなるが、出来るだけ出歩きたくないのが本音であろう。
身重な妊婦に長距離移動をさせて良いのかという懸念は大きい。
移動中に事故やモンスターに山賊などの襲撃があったらという危惧もある。
それに、生まれたら村に戻って来る事になる。
生まれたばかりの赤子を抱えて、というのも心配の材料になる。
出来る限り村の中で全てが行えるようにしてもらいたいというのは誰もが考えていた。
そういった中で様々な要望が出てくる。
特に特に大きなのは、
「産婆さんを用意してもらいたい」
というものだった。
出産に際して男に子供を取り上げてもらう、というのに抵抗があった。
当然ながら、男に色々と見られるというのを嫌ったというのが大きい。
どうせ見られるなら同性の方が気楽である。
なので、出来れば産婆さんをという声が大きかった。
ただ、さすがにその為だけに連れてくるというのも難しい。
出産専門の人間を抱えるほど村にも余裕が無い。
これから立て続けに生まれてくるだろうと予想はされるが、それでも30人になろうという小さな集落に専門家を抱える余力はない。
いずれは出産の手助けが出来る者を用意するにしても、今すぐというのは難しかった。
「出来れば、女衆から産婆の技術レベルを上げてくれる人が出てくれればいいけど」
タカヒロは女衆を見渡して要望を口にする。
理想を言えばこれが最善である。
「今すぐ全部が出来るようになってくれとは言わない。
でも、出来ればこの技術を伸ばしてくれる人が出てくれるとありがたい。
最低でも2人はね」
人数が複数なのは、産婆が出来る者が妊娠していた場合に備えてである。
ただ、こうなると女衆の仕事が増えるので、簡単にはいかないのも確かである。
「けど、いずれはそうなってもらいたいと思ってる」
話を聞いた女衆は、なるほどといった面持ちで頷いていく。
特に、妊娠をしてるミオは真剣に考えはじめていく。
実際に自分が当事者になる事で視点や考え方が変わるのだろう。
今後色々と変えていかねばならなくなる。
今年の冬までに改定案を決めねばならない。
予定していた事を変更しなければ、様々な面で支障が出る。
分かりやすいところで言えば、材料の発注である。
当初の予定と違うものを作るとなれば、当然ながら求める材料が変わってくる。
共通するものもあるだろうが、求める量が変わるというのもあるだろう。
だからこそ変更するならなるべく早くしていかねばならない。
発注してから実際に物が揃うまでの時間もある。
変更するならなるべく早く決めねばならなかった。
そして、変更というのはなかなか容易に出来るものでもない。
関わる要素が多くなればなるほどこの傾向は強くなる。
タカヒロ達の村も例外ではない。