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153/259

153回 今後のために色々と変更を

「ほー」

「へー」

 周旋屋にいたサキとカズマは、そう言いながらタカヒロとミオに目を向けた。

「まあ、おめでとう」

「とうとうやっちゃったか」

 祝いの言葉を述べるカズマの横で、サキがため息を吐く。

 ある程度予想していた通りの反応を示してくれる。

「まあ、これで逃げる事は出来ねえな」

「生まれてくる子供達のためにもしっかりね」

「もちろん」

 言われるまでもない。

 町に来たのも出産に備えて必要なものを揃えるためである。

「臨月近くになったら、こっちに来るだろうけど」

「そういや、そっちには産婆とかいないんだっけ」

「医者すらいないから。

 今、医療技術のレベルを上げてる奴はいるけど」

 まだ実用的な水準までレベルは上がってない。

 例えまともに医者としてやっていける水準になったとしても、医療器具などがない。

 医者がいるだけかなりマシなのだが、村の医療水準はまだまだ低かった。

 出産に至ってはもっと悲惨である。



 だいたいの場合、村では出産になれた者がいるのだが、タカヒロ達のところにそういった知識や経験のある者はいない。

 奴隷として買われてきた女衆も、子供を取り上げた事のある者は皆無だった。

 こういった事は、代々村の女の仕事として受け継がれていく事がほとんどである。

 しかし、奴隷として売られていった者達は、そうした経験すらする事無く奴隷商人に引き渡されていた。

 このため、出産に立ち会える者が皆無という、村としてはあるまじき状態になっている。

 基本的に自給自足に近い状態にならざるえない村では、出産から葬式まで自己完結せざるえない。

 出産が出来ないというのは、実に致命的であった。



「産婆さんも調達しなくちゃならんのか」

 カズマの呆れるような声に「そうだよ」とタカヒロは答えた。

「村にいる女の誰かがやってくれるようになればいいけど」

「まだ決まってないのか?」

「なかなかね。

 毎日の仕事もあるし」

 産婆に必要な技術のレベルをあげるとなると、そちらから手を引かねばならない。

 その余裕が今の村にあるのかというと、かなり厳しいものがあった。

 だが、少しでもこうした事が出来る人間が必要だった。

 今後も赤子は続々と生まれてくるのだから。

 その都度町に嫁さんを連れてくるとなるとかなり大変な事になってしまう。



「あれもこれも足りないってのが本当によく分かるよ」

 普段の生活に必要なものは段々と揃ってきたが、こういった事態に求められるものがない。

 この先に必要になると分かっていたのに、どうしても後手後手に回ってしまっていた。

 予定していた様々な設備の導入計画も、一度考え直さなくてはならなくなった程だ。

 とにかく出産関係の知識や経験の不足はどうしようもない。

 この部分だけでも早急に補強しておきたかった。

「誰か、こういう事に詳しい人とか知らない?」

「さすがになあ」

「周旋屋でもねえ」

 人員派遣が仕事の周旋屋だが、出産などに詳しい人間はさすがに揃えていなかった。

「町の産婆さんに聞くしかないんじゃないのか?」

「やっぱりそうなるか」

 それ以外に方法がないのは確かである。

「会っておかないとまずいよな」

 出産に備えて必要な事を聞いておきたいところである。

「会えればいいんだけど」

 都合が付くなら、町にいる間に色々話を聞くつもりではいた。

 もっとも、聞いただけでどうにかなるわけもない。

 専任で人をつけて、指導を仰ぎたいところだった。

 だが、急な事なのでその準備すら出来ていない。

「しくじったな……」

 自分の不手際に泣きたくなった。

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