150回 何かしようとして思ったほど出来なかったが成果はあったはずな年末
モンスター退治に行く者達は、ついでに近隣を歩き回り、多少なりとも開けた所を探していく。
村に居る者達は、引き続き今後作っていく設備について考えていく。
そして、家の周りに巡らせる排水溝の設置を考えていく。
必要な材料の大半を町で買い付け、出来る所まで排水溝を作っていく。
材料が揃えばそれほど難しいものでもない作業である。
タカヒロ達は家の周囲に溝を掘り、補強の板を設置していく。
その上に、間違って足を踏み込まないように板で蓋をする。
大人がのっても大丈夫なように、厚みのあるものを用いていく。
まだ完全で無いにしても、村の排水溝はこれでどうにか形になった。
将来を見越した新たな居住可能場所の調査はもう少し難航する。
出来るだけ水平で、なおかつそれなりの広さが欲しいというのだから、簡単にみつかるわけがない。
平らな場所があったとしても、木々が生い茂っていて、すぐに居住地に出来ない事がほとんどだ。
また、出来れば水のあるところの近くであるのが望ましい。
必然的に川の近くとなるので、どうしても場所が限られる。
村からさほど離れてない地域でというのもあり、候補地すらなかなか見つからない。
多少良さそうな場所も、川から離れていたりする。
何にせよ、森を切り開かねばならず、それだけで相当な手間がかかる事になるだろう。
普通なら、仕事を求めて町に、あるいは都会に、とでもなるかもしれない。
だが、町であってもそうそう仕事がないのは義勇兵である彼等はよく知っている。
モンスター相手の危険な商売をしてるのは、他にまともな職が無かったからだ。
ならば、村の近くでモンスターを倒していく方がまだマシである。
危険ではあるが、稼ぎは得られる。
その為にも住居は絶対に必要になる。
どこに行っても生きるのは大変である。
まだこの村で踏ん張っていた方がよっぽどマシと言えるほどに。
だが候補地すらもなかなか見つけられないまま時間が経っていく。
そうしてるうちに年末に入っていく。
慌ただしいながらも、一年の区切りを控えて村はその準備に追われていく。
片付けねばならない仕事はそれまでに終えて、新しい年を落ち着いて迎えるために。
「なんだか忙しかったな」
モンスター退治に村の整備にと色々あった。
何より、ミオとの結婚があった。
それを思い出し、タカヒロは大きく息を吐き出す。
既に今年の仕事は切り上げている。
年末年始に備えて必要な食料なども揃えている。
お節料理とまではいかないが、保存がきくものを用意して年末年始は何もしないでいられるようにした。
これで一週間くらいは本当に休む事が出来る。
「少しは落ち着けるかな」
「大丈夫だよ」
ミオはしっかりと頷く。
「ちゃんと準備もしたし」
「まあ、そうなんだけど」
それでも何となく不安になったりする。
心配性なせいであろう。
義勇兵だから、安直に大丈夫だと思わないようにしてるというのもある。
慎重な行動が命をつなげていく事を知ってるので、どうしても不備はないか、問題はないかと考えてしまう。
持って生まれた性分かもしれないので、なおそうと思ってもなおるものでもない。
「大丈夫だって」
そういって笑うミオの声が、気持ちをなだめてくれる。
言われて「それもそうだよな」と思って焦りを解く。
家の事をしっかり見てくれているミオが言うのだからと焦りを捨てる。
「じゃあ、のんびりするわ」
「そうしてそうして」
夫婦として初めての新年に向けて、二人は穏やかな休日を過ごすことにした。