148回 皆で作る初めての冬 6
「疲れた……」
「がんばったね」
家に戻り、床に転がり、労いの言葉をもらう。
帰って来てからのこの繰り返しがいつもの事になって大分経つ。
それでも言って貰えるとありがたくて気分がほぐれる。
冬場の作業の方は手探り状態で遅々として進まないが、それも忘れる事が出来る。
「あー」
「どうしたの?」
「こうしてる時だけが幸せだ」
「何言ってるのよ」
呆れつつもお茶を持ってきたミオは、タカヒロの机にそれを置く。
「まだこれから色々やっていくんでしょ」
「まあなあ。
まだあれだけで終わらせたくないし」
やりたい事、作りたいものはある。
しかし実現するのは先の事になるだろうとも思っている。
この冬の間では無理だとも。
「色々準備して……来年に持ち越しかな」
そうせざるえないだろう。
とにかくあらゆる物が足りない。
技術も材料も道具も。
それらを洗い出していく事でこの冬は終わりそうだった。
実行は来年になるだろう。
「でも、来年になれば、もう少しはどうにかなるかも」
必要なものを揃えるならばどうにかなりそうだった。
来年になれば技術も上がってるだろうし、それが物事をもう少し円滑に進めていく事になるかもしれない。
今はまだ、何が必要で、それにどれだけの金がかかるかくらいしか分からない。
次の準備に向けた努力で全てが終わってしまう。
「こんなもんか」
今分かってる事だけを書き出し、すぐにそれらを実現するのは不可能と判明する。
排水溝一つとっても時間と手間がかかる。
区画を決めて取りかからねばならないのもその理由だ。
まずは測量をしてからとなる。
そちらの方は少しずつであるが進んでいる。
測量技術をとった者が村全体の地図を作り出している。
今後の活動はそれをもとにする事になるだろう。
水場の排水溝は、区画整理に触れるほどの大きなものでないから出来た事だ。
これからは違う。
ただ、設計図などの図面は着実に出来上がってきている。
今の技能レベルで作れるものはあちこちから上がってきていた。
レベルが上がる来年には、それらも手直しがされるだろう。
それでも、現段階で何がどれくらい必要なのかが見えてくれば必要な物を用意しやすくなる。
今年はそれで充分であろう。
(とにかく作業場。
それと、出来れば鍛冶場だな)
生活用の設備や施設も欲しいが、それらを作る為のものも必要になる。
倉庫とあわせて、色々と物入りだ。
(俺達だけで作るんじゃなく、材料の購入も考えないと)
木材を周辺の木々を伐採して調達するというわけにもいかない。
やるにしてもどうしても材料不足が考えられる。
周辺からの調達以外にも色々と取りそろえないといけない。
(やっぱり物入りだな)
工夫だけでどうにかなるようなものではない。
最低現必要なものすら今はない状態だ。
それらを揃えていかないといけない。
(春からがんばらないとなあ)
作業場に鍛冶場に倉庫。
そして、比較的簡単に作れるだろう排水溝。
このあたりは出来るだけ早く設置したかった。




