147回 皆で作る初めての冬 5
「水はけがいいねえ」
水場で作業する女衆は口々にそう言った。
「今までは穴に水を捨ててから、どうしてもねえ」
「水がなくなるまで変な匂いもしてたし」
「夏は虫もわいてくるしねえ」
「これなら流していけるから助かるよ」
そんな声が上がっていく。
それを聞いて作業をしていた野郎共は、苦労が報われた気がした。
出来上がってみると、その効果は大きかった。
今までは排水用の大きな穴だけだったので、使用する水の量すら考えながら使っていた。
だが、今は使った分だけ流せば良く、無駄な事を考えないで済む。
排水溝一つで格段に面倒が減っていた。
あらためて設備が増える事による効能が分かった。
同時に、女衆の作業場がどれだけ整備されてないのかも気づいた。
出来るだけ要望を聞くようにはしてきたつもりであるが、実際に水場にきてみて至らない所が色々見えた。
このまま放置したら作業に支障が出る事もあるだろうとも思った。
村全体の設備も大事だが、女衆の作業場もこまめに手を加えるようにしようと決まった。
でないと、炊事や洗濯などで支障が出る。
それは男達にとっても大きな問題になってしまう。
また、今回の作業で分かってきた事もある。
木工加工をしようとして判明したのだが、作業場が必要だという事だ。
そう大したものでもなくていい、屋根のある場所が欲しかった。
出ないと天候の影響を受ける事になる。
露天での作業はそういった問題が常につきまとった。
また、出来上がった材料などを保管しておくための場所も必要になる。
雨ざらしにするわけにはいかないからだ。
住居とは別に村で使う作業場に倉庫が求められた。
あげればきりはないが、こうした問題が見えてきただけでも水場に排水溝を作った価値はあった。
今後の事を考えて、これらを解決していく事にしていった。
とりあえずは作業場であろうか。
この先何をするにしても、必要な作業が出来る場所がないとどうしようもない。
もちろんすぐに造ることが出来るわけがない。
だが、何が必要なのか分かったのは大きい。
「実際に造るのは来年になるかもしれないけど、予定に入れておこう」
またもややらねばならない事が出来たが、それでも必要な部分が見えてきた。
それは大きな前進である。
「あとは人の動かし方か」
技術のある者とそうでない者の配分。
それらも考えていかないといけない。
とにかくやる事が多くなっていく。
悩みはまだまだ尽きることはなさそうだった。