表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/259

144回 皆で作る初めての冬 2

「全然ゆっくりしてないね」

 悩んでるタカヒロの後ろからミオが声をかけてくる。

「少しは息を抜きなよ」

「そうしたいんだけどねえ……」

 出来れば苦労はしない。

 村のこれからを考えるとどうしてもあれこれ悩む。

 とはいえ、これ以上無理をしてもどうにもならない。

 一度思考を放棄して寝転がる。

 ようやく導入した畳の感触が心地良い。

「お茶、飲む?」

「ああ、置いておいてくれ」

「はいはい」

 行儀の悪い亭主に文句も言わず、ミオはタカヒロの机に湯飲みを置いた。

 様々な事を書き散らした紙をよけて。



「でも、そんなに大変なの?」

 横になってぼーっとしてるタカヒロに尋ねる。

 聞くまでもないとは思ってるのだが、どうしても確かめたくなってしまう。

 目の目で唸って首をひねって体をひねって伸ばして、あーでもないこーでもないと言ってればそうなるだろう。

「まあねえ」

と唸るタカヒロは、自分が抱えてる事をどう伝えようか考えて、やめた。

 自分で整理すら出来てない事を他人に伝える事など出来ない。

「ひたすら面倒だ」

 事実を端的に伝えてそれで終わりにしてしまう。

 それに特に不満を抱かず、

「そっか」

とミオはタカヒロのところによっていく。

 そして、その頭を自分の膝にのせた。

 タカヒロの精神安定にはこれが一番とよく分かっての事だ。

 女房の気遣いに、タカヒロは遠慮無く甘えていく。



「落ち着いた?」

「いーや、全然」

 暫くして尋ねられるが、答えは決まってる。

 何せ解決策が何一つ浮かばないのだ。

 とにかく問題山積みでどうにもならない。

 どこから手をつければいいのかも分からない。

 まずは簡単なところから、とは思うがそれが何なのかも分からない。

「頭がこんがらがってどうしようもない」

 そこから抜け出せないでいる。

 きっかけがあれば抜け出せるのかもしれないが、それも思いつかない。

 そうしてるうちにも時間が過ぎていってしまう。

「どうすりゃいいのかねえ」



「うーん、私からは何とも言えないけど」

 ミオも答えがあるわけではない。

 何をどうすればいいのかなど分かるわけもない。

 ただ、自分の立場というか、自分の視点というのは持ってる。

「出来れば水はけを良くして欲しいな。

 水場の周り、結構大変だから」

 主婦としての要望である。

「今は水捨て用の穴を使ってるけど、すぐに一杯になるし。

 変な匂いもでてくるし。

 なんとかならないかなって思うよ」

「なるほど」

 聞いてるタカヒロは、そんなもんかと思った。

 普段あまり目にする事のない生活担当者達の声として、少し珍しさはあった。

 が、それを聞いてすぐに思い立つ。

「ちょっとそこを見せてくれないか」

 体を起こしてミオに向いてそう問いかけた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。




活動支援はこちら↓

あらためて支援サイトであるファンティアの事でも
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/501269240.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ