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【完結】異世界転生してモンスターを倒してそこそこ成功したので故郷に帰ったら、幼なじみを奴隷として買う事になった  作者: よぎそーと
第6章

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142回 祝宴

 それから日を置く事なく、式は挙げられた。

 白無垢に身を包んだミオと共に神社の神前に進み、婚礼の儀を進めていく。

 町にある神社で行われた式には、タカヒロの集団の者達と義勇兵仲間。

 そして、仕事で何かと縁があった者達などが集まってくれた。

 さほど人数は多くはないが、気心の知れた者達である。

 そんな者達が囲んで祝ってくれるだけで充分だった。



 ただ、タカヒロもミオも家族は一切呼ばなかった。

 大して良い思い出もない、それどころか自分らを下僕扱いしてた家族である。

 良い思い出などあるわけがない。

 それでも家族なのだから、などという考えもない。

 家族だからで犯した事を無い事になど出来るわけがなかった。

 むしろ、こういった者達を呼び寄せる方が問題だろうと思っていた。

 悪しき因縁は断ち切らねばならない。

 それが親子であろうともだ。

 タカヒロとミオにとって家族とは、そうしたものである。



 だが、式がそれで気まずいものになるわけでもない。

 言祝ぎ祝ってくれる者達が集まってくれている。

 それが大事であった。

 例え縁者であっても悪逆非道な輩など招きたくもない。

 そばにいてもらいたいのは、赤の他人でもこうやって祝ってくれる者達である。

 そんな人間に囲まれてタカヒロとミオは幸せだった。



 神社での式が終わった二人と参集してくれた者達は、そのまま周旋屋へと向かう。

 食堂での祝宴及び披露宴を行うためだ。

 さして長くもない道中、お祝いと冷やかしとからかいの声が響き続ける。

 ミオには主にお祝いを。

 タカヒロにはからかいが。

 それぞれ投げかけられる。

 そんな声にミオは嬉しそうに。

 タカヒロはしかめっ面で返事をしていく。

 そんな調子でやかましくやりながら周旋屋へと戻っていき、大騒ぎの本番が始まっていく。



 食堂にて行われた宴会は盛大さを極めた。

 万歳やおめでとうの連呼。

「上手くやりやがって!」という賞賛と羨望と嫉妬の声が野郎から上がる。

「おめでとう!」という祝福の声が女子から上がる。

 野郎共は、白一色のミオの美しさを見てのものである。

 それを見て、自分もあやかりたいと思いつつも、タカヒロへの嫉妬と怨嗟がおさえきれなかった。

 ミオへの言葉は、奴隷でありながら幸せを掴んだことへのお祝いだ。

 そこに自分も同じようになれればという羨望と嫉妬もやはりある。

 それでもやはり本心から祝いはする。

 次は自分が、と思いながら。

 それでも集まった者達は、今日から新たに一歩を踏み出していく二人を祝っていく。

 それを肴にしてどんちゃん騒ぎを楽しむというのが本音であるが。

 とはいえ、祝う気持ちが無いわけではない。

 義勇兵と奴隷という、世の中の最底辺ながらも幸せを掴んでいった二人を素直に祝う気持ちもあった。

 そこに自分達の希望を見いだしてるからでもある。

 奴隷という分かりやすい社会の最底辺。

 義勇兵という、軍人になれなかった半端者の代名詞。

 そんな者でもこういう風になれるのだという事を、タカヒロとミオは示している。

 その事がこの場にいる義勇兵達に可能性を示していた。

 未来における成功というものを。



 夕方になり日が暮れてようやく宴会は終了する。

 事前に用意した酒や料理は途中ですぐになくなっていた。

 だが、集まってきた者達はそれぞれ自分で注文をして料理や酒を並べていった。

 あくまで自分のためであるが、おかげで宴席が解散になる事はなかった。

 また、さすがに主役の二人には、それとなく飲み物も食べる物も差し入れしていっていた。

 お祝い、ご祝儀としてである。

 おかげで、宴が終わるまでテーブルの上には飲み食いするものが並び続けていた。



「終わった……」

「大変だったね……」

 部屋に戻った二人は、盛大に疲れた調子で床に横たわった。

 まだ婚礼衣装の紋付き羽織袴と白無垢をつけたままである。

 脱ぐのも億劫でそのままにしている。

 だが、とにもかくにもこれで大事な一日を終える事が出来た。

 その事にほっと安堵をおぼえもする。

「…………」

「…………」

 無言で天井を見上げる二人は、多大な疲労感と、それをもたらす作業が終わった事だけを実感していく。

 それ以外の事は、今は頭に浮かんでこなかった。



 それから暫くして。

「……ねえ、これどうしよう」

「ん?」

「これ、花嫁衣装」

「ああ、着替えないとな」

「うん、それもそうなんだけど。

 これさ、もう使わないでしょ。

 一生に一度のもののわけだし」

「そうだな。

 ……また使う機会なんてこないで欲しいぞ」

 それは自分以外の誰かとの婚礼という事だろう。

 そんな事態には陥ってもらいたくなかった。

「それは無いよ、きっと。

 でも、もう使わないけどどうしたらいいのかなって」

「ああ、そっか」

 言われて気づいた。

 確かに白無垢はもう使う事は無いだろう。

 ではそれをどうするのかを考えねばならない。

 二度と使わないなら処分してしまうのが普通かもしれない。

 しかし、結構な金額がしたものだ。

 大枚はたいて仕立てたのだから、一回こっきりで捨てるのも勿体ないと思ってしまう。

「……とっておこうか」

「え?」

 タカヒロの言葉に、ミオが不思議そうな顔をする。

 とっておく、保管してどうするのか分からなかった。

 そんなミオに、

「とっておいて、子供達に使ってもらおう」

「あ……」

 言われてミオも理解した。



 白無垢に限った事では無いが、大事なもの、高価なものというのは可能な限り使い回しをする。

 そう言うとあまり良い印象はないが、一度で使ったものを捨てるよりは良い。

 代々受け継ぐとも言う。

 そうやって、出来るだけ長持ちさせていく。

 高価な道具などはこうして受け継いでいくのが普通である。

 財産と同じだ。

 親から子に受け継いでいくのが、この世界においてごく普通に行われてる事であった。

 婚礼衣装も例外ではない。



「そうだね」

 言われてミオも頷く。

「大事にする。

 それで、子供に着てもらう」

 保管も大変だが、それでも大事にしようと思った。

 生まれてくるであろう子供に、いつか使ってもらうために。

「大切にしないと……」

「そうだな」

 保管の仕方をどうしようかと考えるミオを見て、タカヒロも大きく息を吐く。

「俺もがんばらないと……」

 これからも家族を支えていかねばと思う。

 もう今日からは他人ではなくなったのだから。

 今まで通りにミオを抱えていかねばならない。

(……だよなあ。

 今まで通りだよなあ)

 結局何も変わらないんじゃないかと思って、少しだけ気を抜く事が出来た。

(奴隷と女房で、そんな違いがあるわけでもないだろうし)

 そもそも、奴隷だった頃と何が違うのだろうとも思う。

 せいぜい、子供が増えるくらいではないだろうかと思ってしまう。

 それは確かに大きな違いではあるとも思うのだが。

 だが、結局は奴隷であろうとミオが無理をしないように気をつけてはきた。

 必要なものは出来るだけ用意しようとも思った。

 仕事はさせるが、させる仕事に必要な事は出来るだけ用意するよう心がけもした。

 なんだかんだで奴隷扱いはしてこなかったような気がする。

 おそらくそれは今後も続くだろう。



「なあ、ミオ」

「なに?」

「俺、たぶん今までとあまり変わんないと思う」

「うん?」

「結婚したからって、今までと同じようにやっていくと思う」

「うん」

「何かしなくちゃならないのかもしれないけど、何をすりゃいいのかさっぱり分からん。

 だから、今まで通りでいく」

「うん、それでいいと思う」

 ミオは特に何の不満もなく、素直に承諾した。

「兄ちゃんはご主人様としても悪くないと思うし。

 今までで悪いところとかもなかったし。

 そのままでいいと思う」

「そっか」

 とりあえず、これから何かを特にあらためる必要はなさそうである。

「今までも随分楽してきたし。

 奴隷とは思えなかったよ」

「まあ、そういう風に扱うつもりもなかったしな」

 それはこれからも変わらないつもりでいる。

「でもあれだ。

 一応命令しておく」

「え?」

「これからも俺の世話をしっかりやってくれ。

 生まれてくる子供もな」

「……うん、分かったよご主人様」

 そう言うミオをタカヒロは抱き寄せた。

 まだ奴隷で、今日から女房になった女を。



 畑中タカヒロ。

 20歳、義勇兵。

 渡小道ミオ。

 16歳、奴隷。

 本日、この日より夫婦である。

 ある程度区切りがついたかなー、と思うところまで話をもってこれた。

 ここで終わらせてしまえば、そこそこ綺麗にまとまってくれるかなとも思う。

 ただ、これで終わりじゃなく、ここからももうしばらく続けたいとも思ってる。

 結婚で終わりじゃなく、その後も続く人生というのを少しでも描ければと思うので。

 書くだけの技量や力量があるかどうかは謎。



 ただまあ、大事なのは主役とヒロインのイチャイチャぶりが出せてるかどうかである。

 出ていれば問題は無い。

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