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140回 この地域限定で奴隷の扱いも変わりつつあり 2

「しかし、奴隷を女房にねえ……」

「ああ。

 まあ義勇兵はそれくらいしか女を囲える可能性がないからな」

「違いない」

 確かにその通りなので反発も出来やしない。

「そのせいか、奴隷商人がなあ」

「なんだ?」

「いやな。

 今まで奴隷商人は文字通り奴隷を売り買いしてたわけだろ。

 それが今じゃ、義勇兵専門の結婚仲介業者みたいになっててな」

「……は?」

 さすがに予想もしてなかった事に、意表を突かれるというか虚を突かれるというか。

 とにかく全く考える事もできなかった事が出てきて頭が真っ白になった。



 奴隷商人はあくまで奴隷商人のままである。

 人を買ってきて、買い取る事が出来る者に売るという業務形態は変わってない。 

 だが、需要の増加とその用途がかなり限定された事で趣が変わってきていた。

 何せ、買い取るのはほとんど義勇兵である。

 それも身の回りの世話が目的である。

 正確に言うならば、もっと卑猥な事も含まれる。

 だが、奴隷であれば夜のおつとめもさせられるのは当たり前なので問題になるという事はない。

 それに、やる事といえば、メイドや女中と大して変わらない。

 更に踏み込んで言えば、こうでもしないと女にありつけない義勇兵の嫁さん候補という事になる。

 そんなわけで奴隷商人も奴隷とは名ばかりの嫁さん斡旋人という状態になっている。

 地方で、嫁の貰い手のない多くの娘を連れて来て、女日照りの義勇兵に紹介するのが業務内容になりつつあった。

 恐ろしい事に、これが結構良い商売になってしまっている。

 何せ嫁の貰い手のない娘はそこらにあふれている。

 言い方はなんだが、商品の仕入れにそれほど手間はかからない。

 そして、仕入れた商品は割と簡単に売りさばいていける。

 この町限定であろうが、奴隷商人としてはかつてないほどの繁忙期を迎えていた。



 そしてまがりなりにも商人であるから、奴隷商人もここで留まらない。

 商品に付加価値があれば高値で売れるというのは当然である。

 比較的勤勉であったこの町の奴隷商人は、商品として奴隷を売買する奴隷の付加価値を高める努力をはじめた。

 もちろん見た目を良くするというわけではない。

 多少なりとも奴隷として働けるように教育を施す事にした。

 風呂などにいれて清潔さをたもち、身なりを良くするのは当然として。

 それだけに留まらず、買われていった後の評判を保つべく多少は仕事をおぼえさせていった。

 納品してからすぐに売れてしまう者はさすがに無理である。

 だが、売れ残りはどうしても出て来る。

 それらに少しでも付加価値を付けるべくがんばった。

 何せ売れなければ不良在庫になる。

 ただで置いておくのも無駄になる。

 だったら、少しは何かが出来るようにしておいた方が良い。

 何も出来ない無能より、少しは何かを身につけてる者の方が売れるのだから。



 そんなわけで、掃除から始まり、洗濯、炊事に裁縫と基本的な事をやらせていった。

 最初は店の中を少しでも整理するためでもあったが、それが教育というか商品価値の増大につながると気づいた。

 奴隷を買い取る義勇兵が求めてるのは、嫁さんである。

 その実態は生活全般の面倒を肩代わりしてもらう事である。

 身も蓋もない言い方である。

 だが、これは主婦がやる事とほとんど重なる。

 なのでこういった事が出来る者は売れやすくなる。

 実際、容姿や性格が同じ程度ならば、多少でも何かが出来る者の方が売れた。

 身につけた技術が魔術で閲覧可能であるのも、こういった流れを強くした。

 奴隷商人はこうして不良在庫をかなり少なくする事が出来た。

 面白いもので、売れずに残っていた商品が、長い間の在庫生活で技術を身につけると格段に高い値段がついていく。

 おかげで奴隷商人は、売れ残りの心配を極端に減らす事が出来るようになった。

 手元に置いておいた商品が、高級品として出荷できる可能性が出てきたからだ。

 そんな事をしていったおかげで、奴隷商人は家政学校のようなものになりつつあった。



「おかげであの奴隷商人は評判になってるよ」

「なんとまあ」

 呆れるしかない。

「本当に奴隷商人なのか?」

「さあな。

 でも、そういう事ならって売り飛ばすならこの町の奴隷商人にって奴も出てきてるらしい」

「おいおい……」

「どこに売り飛ばされるか、どんな目にあうかも分からない他所の連中よりはいいんだろうな。

 何せ、買い取るのはほとんどが義勇兵、それも実質的な嫁さんとしてだ。

 田舎で家の手伝いで一生を終えるよりはいいんだろう。

 家族も、売れば金が手に入るから、まあ損はしないだろうし」

「だからってなあ……」

 本当にそれでいいのかと思ってしまう。

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