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139回 この地域限定で奴隷の扱いも変わりつつあり

「そういや、お前のせいで色々変わってきた事もあるぞ」

「なんだいったい」

 唐突にそんな事をオッサンに言われて困惑する。

「いやな、うちにいる義勇兵共がどんどん奴隷を買っていってな。

 おかげで奴隷商人が悲鳴をあげてるのよ」

「どういう事だ?」

「なに、義勇兵がどんどん買っていくから商品がなくなってるようでな。

 あわててあちこちかけずり回ってるようだ」

「それは……どうなんだ?」

 少し想像して頭が痛くなった。

 奴隷商人が商品である奴隷の調達に奔走する。

 あまり平和的とはいいがたいものがある。

 むしろ、それは取り締まらねばならないのではと思ってしまう。

「まあ、売らなきゃやってられない所もある。

 それで助かる連中だっている。

 人の売り買いはほめられたもんじゃないとは思うが、しょうがない部分もあるわな」

「それは分かるけどさ」

 それでもどうなのかと思ってしまう。

「でもな、おかげで変わってきてるものもある」

「ほう?」

 少し興味を抱いてオッサンの話を聞いていく。



 義勇兵が奴隷を買うようになっての変化は色々ある。

 まず、義勇兵だが今までほど無茶や無体はしなくなった。

 購入目的は基本的に夜の娯楽の為なのだが、それを楽しみに確実な生還を目指す者が増えた。

 これは購入後だけでなく購入前も含めての事である。

 当たり前だが、奴隷を購入するにはそれなりの金が必要になる。

 この金を貯めるために無駄な出費を控えるようになった。

 また、モンスターとの戦闘も無理をせず、可能な限り損害を抑える者が増えていった。

 このため、義勇兵があげる成果に安定性が出て来ていた。

 安定性は継続的な儲けに繋がる。

 おかげでモンスターの核を仲介する周旋屋も定期的な儲けを上げる事が出来るようになっていった。

 爆発的な稼ぎはないが、安定してどれだけの量が入ってくるのかの目処がたつのは悪い事ではない。

 売買の目処が立つので周旋屋としてはありがたい事だった。



 購入前の貯金の時期に培ったそうした計画性は奴隷の購入後も継続する。

 今度は、折角かった奴隷といちゃつくためである。

 購入したはいいが、ろくろく楽しむ事無く死んでしまっては意味が無い。

 誰もが死なないで生き残り、なおかつ稼いで帰る事を考え始める。

 むしろ、購入前よりも几帳面に生きていく者が多くなる。



 その余波で、町の治安も多少は良くなった。

 以前は酔っぱらった義勇兵などがあちこちで喧嘩沙汰などを起こしたりもしていた。

 それがだんだんと減っていった。

 外で酒を飲むくらいなら家で奴隷と一緒にいた方が良い。

 そう考える者が多くなったからだ。

 家に籠もる事が多くなったために、当然ながら外で騒ぎを起こすことはない。

 騒ぎを起こす者が減れば、平穏になるのは当然である。

 まっすぐ家に帰るという行動が、無駄に発生する騒動を減少させていた。



 これがまた不動産事情すらにも影響を与えていた。

 奴隷といちゃつくためには、やはり個室が必要になる。

 当然ながら住宅需要が発生する。

 レベルが上がれば比較的稼ぎが良くなる義勇兵である。

 賃貸にしろ新築にしろ、支払い能力に問題は無い。

 さすがに借金は出来ないので、新築の建築は金のある者達に限られる。

 だが、個室の需要はあるので長屋や団地、アパートなどの需要は大きい。

 町の中の賃貸物件が空き室になるとすぐに義勇兵が借りていく事から、この需要を感じ取った不動産屋もいる。

 そういった者達は、試しにと作った長屋が即座に埋まったのを見て、新たな賃貸物件建設に踏み切った。

 同じように考える同業他社も多く、町は住居建設で賑わっていた。



「そんな調子だ」

「なんだかな」

 まさかそんな事になってるとは思わず、何とも言えなくなる。

「まあ、悪い方向に行ってるわけじゃないならいいんだけど」

「安心しろ、むしろ良い方向に動いてる」

「そいつは何よりだ」

 こっちも外に出ていってくれる奴らのおかげで、新人を入れる事が出来てる」

「へえ……」

 またもや意外な話が出てきて驚く。

「女を作った連中はこぞって外に出ていくからな。

 おかげで空き部屋が出て来る。

 そこに新人を入れる事が出来て助かってるよ」

 そうして入ってきた新人は、現在賑わってる建築に従事する者が多い。

 周旋屋としては、この需要の爆発でそれなりに儲けてるとか。

 そして、どうしてもあぶれて義勇兵にならざるえない者も出てきている。

 それらも、既存の義勇兵達が吸収していってるという。

「新入りが腕をあげれば、このあたりからモンスターが一掃されるかもな」

 人数が増えればそれだけ活動範囲をひろげられる。

 人数を維持する手間も増えるが、それをこなせれば先々の展望もある。

 オッサンが言うように、町の近隣のモンスターを掃討し、更に周囲に活動範囲を拡大していくかもしれない。

 そうなれば、辺境にあるこの町も発展の可能性が出て来る。

 義勇兵の活動拠点として。

「今後が楽しみってやつだな」

 大して期待はしてないが、タカヒロはそう言って置く事にした。

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