137回 生まれてくるのは目出度いが、受け入れ体制をどうするか
「ええと、一家族5人として……」
そこから始まった将来予想はとんでもない事になっていった。
現在、タカヒロの集団の男は15人。
これらが奴隷という名の女房を抱える事になるとして、その夫婦一組に5人が生まれる。
となれば、単純計算で75人の子供が生まれる事になる。
「え……?」
その数が瞬時に頭に浮かび、タカヒロは頭を抱えた。
「おい、ちょっと待て。
どこにそんなに抱えりゃいいんだ?」
村の広さと建てられる家の数を考える。
どう見積もっても、それだけの人数を受け入れる事は出来ない。
「これ、今から考えておかないととんでもない事になるな」
解決せねばならない問題がまた増えた瞬間である。
それでも子供はやはり欲しいもの。
出来るならばたくさん欲しいのは人情である。
さすがに産むなとは言えない。
それに、あまり褒められた事ではないだろうが、娯楽の少ない世の中である。
夫婦でいちゃつくのも楽しみの一つだ。
それを止めろというわけにはいかない。
そもそも、夫婦が仲良くするのの何が悪い、という話にもなる。
「どうすっかな……」
仲良し夫婦がもたらす将来の問題を考え、タカヒロは頭を抱えた。
「まあ、どうにかしてくしかないか」
増える予定の住人の生計(たつき)の道を考えるしかない。
村には全員収容出来ないから、他にも住める場所を作る必要がある。
(村の拡大……いや、別の場所への移住も必要か?)
おそらくそうなるだろう。
それが出来る場所を見つけるしかない。
幸い、この付近は無人地帯である。
どこに移り住もうと咎める者は居ない。
だが、山地でもあるので、平坦な場所はない。
場所によっては、斜面を切り崩し、平坦にならしていかねばならないだろう。
その手間も大変なものになる。
「けど、やるしかねえな」
やってくるであろう人口爆発を考え、今のうちに手をうっておかねばならない。
とりあえず、この事態を周りの者達に周知する。
着手は先の事にしても、まずはそこから始めねばならない。
「なんか考え込んでるね」
紙に書いた将来予想に悩んでるタカヒロに、ミオがお茶を差し出す。
「あんまり考えこまないでよ。
兄ちゃん、昔からそういうところあるから」
「ああ、そうだな」
なまじ現代日本で培った智慧や知識があるから、色々と考えてしまう。
「今度は何を考えてたの?」
「ん?
まあ、これから生まれてくる子供の事とかな」
「え……」
それを聞いたミオは顔を赤くしていく。
「やっぱり、その、兄ちゃんも欲しいの?」
「そりゃまあ、出来ればたくさん欲しいけど」
でも、それがもたらす問題がなあ、などと考えてしまう。
しかし、ミオはそういった事情は全く分かってないので、話を違った意味でとらえている。
「じゃあ、これからいっぱい作るって事だよね」
「ああ、まあそうだな。
授かりもんだからどんだけ出来るか分からないけど」
予想はつくが、実際にどれだけ生まれるか分からない。
だからこそ不安もいだくし危惧もしてしまう。
タカヒロとしては、喜ばしい事ではあるが、悩ましい問題である。
ただ、ミオにとってはそうではない。
「まあ、兄ちゃんが欲しいっていうなら、わたし頑張るから」
「……ん?」
「その、たくさん産んじゃうから。
だから兄ちゃんもがんばってね……色々と」
「お、おう」
ここに至り、タカヒロは話が何か食い違ってる事に気づく。
赤くなってしまってるミオを見てそれに気づく。
何がどうなってるんだと思い、とりあえず自分の言った事を振り返る。
「……ああ、そっか」
タカヒロが口にした子供の生誕についての事。
それは将来の問題として口にしたことだ。
だが、ミオはタカヒロとの間に生まれてくる子供達の事について語ってると受け取っていた。
それを汲み取ってタカヒロは、ミオに話を合わせる事にした。
「まあ、出来ればたくさん欲しいぞ」
「う、うん」
「すぐにどうにかなるもんでもないし、どれだけ出来るかも分からないけど。
がんばって育ててくれよな」
「は、はい!」
真っ赤になりながらも大きく返事をするミオが微笑ましい。
将来の問題も考えねばならないが、この時はその事もとりあえず放り出す事にした。
先の事など今はどうでも良い。
目の前にいる女より優先しなくちゃいけない事など無い。
頭の中はそんな事でいっぱいになっていた。
抱き寄せて押し倒すまで本当にすぐだった。
予約投稿の日時を間違えていた分をこの時間から投稿。
本当なら、これとこの次の部分は昨日のうちに投稿していたはずなのに、と後悔しきり。




