133回 ねがいましては・・・・・・
ただ、優先するべき事があるとはいえ、日々の生活の方も改善したいものである。
家そのものの改修もそうだが、様々な生活用品の調達も急務である。
魔術機具とまではいかなくても、箪笥などは早く調達したかった。
食器棚もそうだし、貯水のための水桶なども必要だ。
とにかくまだまだ様々なものが必要である。
それらを調達するのが先ではないかとも考えてしまう。
実際、生活を考えれば必要である。
だが、式の準備を考えると、そちらの調達もある程度待たねばならない。
どれもこれも金がかかるのでどうしようもない。
「でも、今の分だけでも充分だしね」
最低限の生活用品があるので、生活そのものはどうにかなる。
腕をあげたミオの家事能力のおかげで、一応文化的な生活もおくれている。
だが、それに頼り切るわけにもいかない。
「それでも、最低限はなあ」
少しでも生活水準を上げるために、もう少し物を入れた方がいいのではないかと思ってしまう。
「だって、式の準備のためでしょ。
だったら仕方ないよ」
「それでいいのか?」
「私の為でもあるしね。
文句は無いよ」
そう言ってくれる奴隷(事実上の嫁)には頭が下がる一方だった。
「けどなあ」
それでもさすがにこれはどうにかしたいと思うものもある。
「さすがにもうちょっと充実させてもいいような気がするんだが」
「それはそうなんだけどね」
心配するタカヒロに、家をあずかるミオも少しだけ渋い顔をしつつも反対する。
「これからの事を考えると、贅沢も言ってられないし」
「いや、これは贅沢じゃないから」
生活必需品の導入である。
贅沢とはいわないだろう。
そこまで重要でないにしても、生活を便利にする物を手に入れるのだ。
決して無駄になる事は無い。
だが、家計とまではいかなくても家の中の事をあずかってるミオは決して容赦しない。
「そりゃあ、あればありがたいよ。
買った方がいいんじゃないかっていうのも確かだし。
でも、それで式が遅れたら……」
そこまで来てミオは声につまった。
瞬時に顔が赤くなっていく。
気づいたタカヒロも、照れながら「なるほど」と頷いた。
「まあ、そっちが大事なのも確かだしな」
「うん、そうだよ」
「それじゃあ、家の中の物はもう少し待つか」
「うん、その方がいいと思うよ」
まだ赤くなったままのミオが、俯きながらタカヒロの言葉に追従していく。
そんなミオを見て、微笑ましくなりながら、タカヒロはまだ続く地道な努力に思いをはせていった。
「とはいえ、毎日3万は稼ぐとして、3割が税金で、手取りがこれで……」
「兄ちゃん、そこはもう少し気楽になってもいいと思うよ」