123回 そして冬がはじまり、その中で何が出来るのかを考える事になる
日照時間がそれと分かるほど短くなった頃。
初めての冬を迎え、タカヒロ達はその間の活動についての試行錯誤を始めていった。
当たり前だが、モンスターを倒しにいくのも難しくなる。
明るい時間が短いというのは、それだけで活動時間、そして活動範囲を狭めていく。
その中で出来る事はそれほど多くもない。
それでも費えを補うようにモンスターを倒しにいく。
しかし、多少なりとも余裕があるならば、外に出かける必要性がない。
そういった者達は村の方の改修に勤しむ事になる。
居住地の方は堀と土塁で囲めたが、田畑はそうではない。
出来ればそちらの防備も固めておきたいので、モンスターを倒しにいかない者達が作業にあたる事になった。
それでも、この冬のうちに全てが終わる事は無い。
一部がどうにか形になるだけで終わるだろう。
だが、何年も時間をかけても構わなかった。
どうせすぐに田畑に手をつけられるわけでもない。
既に決めたように、子供達が生まれて育ち、大人になる頃に手を入れられるようにしてあれば良い。
早くても15年ほどの猶予がある。
それまでに形にしておけば良い。
なのでかなり気楽に作業を進める事が出来た。
モンスター退治の方も似たようなもので、あくまで消耗を少しでも軽減するのが目的である。
寒くて体が動かない中で無理をしてもしょうがない。
蓄えそのものは誰もそれなりに持ってるので、極端に慌てる必要もない。
食費などの生活費を多少は補填できるくらいの稼ぎがあれば充分だった。
そして、それくらいの稼ぎならば、多少人数が減った状態であってもどうにかなる。
無理して数をこなす必要が無いのだから。
割と出費の多いタカヒロは、可能な限り連日モンスター退治に出向いている。
そんなタカヒロであっても、それほど熱心に成果を求めてるわけではない。
無論、舐めてかかってるわけではない。
収入に無駄なこだわりをもってないという事になる。
モンスターへの警戒や注意は依然として変わらない。
気合いを入れる部分の区別をつけているだけである。
そうして冬の間の作業が形作られていく。
ほどほどのモンスター退治と、人がいるうちに進めておきたい村の増改築。
人数配分が変わったことで、やるべき作業も異なっていく。
それぞれの進捗具合も違ってきており、それがもたらす結果にタカヒロ達は様々な事を考えていった。
確実に言える事は、夏場に出来るだけ稼いで、冬は村の環境整備に尽力した方が良い、という事。
当たり前の事であろうが、そうした方が無理や無駄がすくないように思えた。
「それと、そろそろ成長の方向も考えていかないとな」
これからの事を考えると、それも考えねばならなかった。
どの技術レベルを上昇させていくのかを。