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119回 寒い季節には

 方針が決まってからの行動は、迷いが無いからか軽やかなものになった。

 成果そのものはさほど違いは無いが、負担や疲労感が変わっている。

 この先どうしようかと迷ってるのと、とにもかくにもやるべき事が決まったのとでは違いが大きい。

 気持ちは体の動きに如実にあらわれる。

 一日三万円ほどの稼ぎをタカヒロ達は着実に叩き出し続けていた。

 そうしつつもタカヒロ達は、やってくる冬に向かって備えていった。



「家の方はどうなってる?」

 村に戻る途中、そんな話が出てくるようになっている。

「隙間とかはないけど、何せ安普請だからな。

 出来るだけ補強をしておきたいよ」

「けど、金がな」

「無いわけじゃないけど、また大枚はたくかと思うとね」

 誰もが来たるべき時に向けての備えと、それにかかる費用について悩んでいた。

 豪雪地帯の雪国というわけではないが、冬になればそれなりに冷え込むようになる。

 なので、冬の寒さに向けた備えは必須であった。

 何はなくとも暖房器具は必須になる。

 この世界の場合、竈や囲炉裏で薪を焚くのが普通であるが、出来ればそれ以外にも備えをしておきたかった。

 家そのものを補強して断熱効果を高めるとか、可能であれば魔術機具を導入するとか。

 さすがにこれらを行えるほどの余裕は無いので、もう少し手軽な手段でどうにかする事にはなるだろう。

 だが、どんな形であれ冬に備えていかねばならない。

「また金が出ていくな」

「まあ、これもこれからのための投資だ」

 出て行く金で手に入れる設備は、今後も使い続けていく事になる。

 今後も長くそれらは生活に寄与していくことになる。

 出費は痛いが、支払うだけの価値は確かにある。

 なので、下手に惜しむ事は出来なかった。

 ここで支払いを拒めば、生活を蝕むことになりかねないのだから。



 幸か不幸か、モンスターの活動は季節を通してさほど差はない。

 とはいえ、モンスターにも種類によって適温は存在する。

 季節の変わり目になれば、それにあわせて移動を開始していき、気温の変化に対応していくようになる。

 渡り鳥と同じような行動をしていると考えればよい。

 なので、寒い時期になれば、北から南へとモンスターの移動が始まる。

 温かくなればその逆が発生する。

 なので、相手になるモンスターは変われども、出没する数などに大きな変化はあらわれない。

 これがモンスターの厄介なところである。

 だが、稼ぎに差が出ないのは義勇兵としてはありがたい。

 冬に外に出て活動するのは大変であるが、年間を通してある程度一定した収入が得られるのは利点である。



「でも、新しい場所だし、ここでのやり方もまだまだ模索中だしな」

「頭を使わなくちゃならんですかね」

「簡単にはいかないだろうな」

「安全第一でやっていくしかないっすね」

「よっぽど危険な奴でもなければどうにかなるだろうけど」

「全員、レベルも上がってるから、どうにかなるだろうさ」

「そうだな。

 無理をしなければどうにかなるだろう」

 それでもどうにもならない事もあるが、あえて口にはしないでいる。

 万全な状態をととのえても、どうにもならない事もある。

 そもそも、どれほど尽くしても万全にはなりえないのが常である。

 誰もがその危険の中でモンスターとやりあっている。

 言わずもがなのそんな事を、あえて口にするほどの野暮はしない。

「まあ、今のうちに出来るだけ稼いで、冬はのんびりと過ごしたいもんですね」

「そうだな。

 まだそんなに寒くないうちに、もう少し頑張っておくか」

 冬の活動時間は短くなる。

 それにあわせて稼ぎも落ち込みがちになる。

 モンスターの数そのものは変わらなくても、こういったところで差が出てしまう。

 秋も深まろうというこの時期は、そうなる前の最後の稼ぎ時でもあった。

「あとちょっとだけ頑張って、それからのんびりと冬に入りたいな」

 誰もがそう思っていた。

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