108回 こんな何気ない会話が普通に行われている 2
「そろそろモンスターを倒しに行くか」
あれこれ話しながらこんな事を漏らす。
防備を作ってる間はモンスターを倒してる者達から稼ぎを分けてもらっていた。
しかし、いつまでもそれに甘えてるわけにはいかない。
田畑までは手がまわらないが、居住地だけなら問題は無い。
守りに何人か残らねばならないが、作業をしてる時より人数を減らす事が出来る。
そろそろモンスターを倒しにいく事を考える時期である。
これから先々、色々と物入りになる。
それらを手に入れる事を考えれば、モンスターを倒して稼ぐしかない。
金になるのはやはりモンスターだ。
幸い、この周囲の分布も分かってきてるし、おびき寄せるのに都合の良い場所も見つかってる。
そこでならばかなりの数を稼ぐ事が出来る。
「でも、危ない事はやめてよ」
ミオが心配そうに言ってくるが、これには苦笑するしかない。
「安全なモンスター退治があるならやってるよ」
「そりゃあそうだけど」
分かってはいるが、言わずにはおれないのだろう。
「出来るだけ安全にはやってるよ。
それでも危険ではあるけどさ」
考え無しにモンスターを倒してるわけではない。
出来るだけ有利になるようにしている。
それでも安全とは言い切れないのがモンスター退治の難しさだ。
だからこそ誰もやりたがらず、競争相手が少ない。
そして、稼ぎはそれなりに大きい。
辞めるわけにはいかなかった。
「こんなので死んでたまるかよ」
そう思うようにもなった。
もとより死んでも構わないとは思ってない。
可能な限り生き残る事を考えて活動はしていた。
だが、それでも「死んだらそれまでだな」という思いもあった。
それは覚悟と言ってよいだろう。
どうしたってどうにもならない時はある。
なのだが、今はそれも変わってきていた。
死ぬ時は死ぬ…………そういう思いは変わらない。
だが、必ず生き残ってやるという決意もある。
ミオがいる、ここに帰ってくるという思いが、そんな気持ちを生み出してもいた。
それがこの先どう影響していくのかは分からないが、タカヒロの中で何かを変えていた。
「まあ、すぐにってわけじゃない。
居残りを誰にするか決めないといけないし」
作業そのものは無いにしても、防衛のために残す者を決めておかねばならない。
タカヒロがモンスターを倒しにいくのはそれからになる。
「体拭ってさっさと寝るぞ」
言いながら、タライのお湯にタオルを浸し、それで体をぬぐっていく。
風呂がないのでこうして体を清めるしかない。
「……風呂もそのうち手に入れないとな」
「それは確かに欲しいね」
周旋屋の宿舎にあった風呂を思い出し、タカヒロとミオはここに導入する物をまた一つ決めた。
何もかもが足りないのだと実感しながら。
「あと、今夜もどうだ?」
「…………そんな事聞かないでよ、バカ」
「正直に言ってくれ」
「それって、命令?」
「うん、もちろん」
「…………バカ」