正直に言ってしまいましょう!
こつ、こつ、こつ、こつ。
衝撃の事実を知らされ、半ば呆然としている
私の耳に響く足音。
「アヤト、遅いから様子見に来たんだが
身元は分かっ.....」
つい先程まで聞いていた、カイラ様の声だった。
「いやァ、こりゃ思ったより面倒な事になりそうですよ」
「どうかしたのか?」
はあァ....とわざとらしい溜息をついて、アヤトが
カイラ様に向き直る。
そして、さっき私に語ったこととほぼ同じ内容を
語り聞かせた。
私の容姿はアリス=ファディアの物と
全く同じにしか見えないということ。
しかしアリスは同時刻、街で炊き出しのボランティア活動をしており、住民や付き人などの目撃証言が数多く寄せられていること。
参加者リストには直筆の署名もあり、アリス=ファディアが王城に侵入した可能性は極めて低い.....
というか、ほぼあり得ないこと。
一通り聞き終えたカイラ様は、訝しげな顔で
私を見つめ、ふむ。と声を漏らした。
「つまりこの女はファディア家の令嬢と
瓜二つなだけの部外者で、面倒な不法侵入者....という事になるのか?」
「それがそうもいかないんスよねぇ....」
困ったようにアヤトが続ける。
「この女が身につけてる宝石類やドレスなんかも
全て、それなりの価値がある物なんです。
肌も爪も髪も手入れされてるから、ある程度の
地位がある御令嬢なんじゃないかと」
淡々と語られる、客観的に見た私のこと。
「あ、あの....」
それにおそるおそる口を挟む。
立場的に危険な行動だが、これだけは言っておかなくてはならない。
「1つだけ、お伝えしたいことがあるんです」
「...発言を許可しよう」
冷たく響くカイラ様の声。
それに同調するように、射殺すような視線を
私に向けてくるアヤト。
怖いけど、これだけは.....
「馬鹿みたいな話です。気が狂ったと思われても仕方がありません...でも、聞いて下さい」
身体がアリス=ファディアと生き写しだろうと
関係ない。
私は芹澤千尋だから。