出会い
「あ、暑い…。」
40℃に近い炎天下の中、帰路を急ぐ。
大体なんでこんなに都会は熱いのか、ちょっと文房具を買いに行っただけで汗がだらだらだ。
「あぁーもう疲れた!!」
まだ大分家まであるし、こんなとこで倒れたら自称帰宅部のエースの名が折れる。
何処かで涼みたいな、喫茶店みたいな所があるとベストなんだけどなぁ。
キョロキョロ周りを見ながら喫茶店を探すが、それらしい看板はは見つからない。
それもそのはず、そもそもここらは都会と言ってもマンションが立ち並ぶ住宅街。
それも日本最大級のこの住宅街、数年前の富士山の噴火の時に集団避難施設として作られたのだ。
事態が落ち着いた今では格安で部屋が借りれるとして、その多くには学生が住んでいる。
「ん?」
普段はあまり気にしなかったが高いマンションの中に木々が多い茂っている公園があるのが見えた。
だが彼が見たのは公園の入り口付近にある小さなレンガ造りの建物。
世界屋と書かれた木の看板が小さく置いてあった。
なんだこんな所に、こんな変な店あったか??。
ま、涼めるなら何でもいいか。
喫茶店じゃないのか?それともそういう設定の店みたいな?
看板をよく見ると「あなたも世界を創りませんか?」と小さく書かれていた。
なんなんだこの店は、地図とか地球儀とか?それとも不動産屋??
しかし、不思議なことに店の中からは珈琲の匂いがするのだ。
「あーいいやもう、恥覚悟で入るわ。」
カランカランという音と共に扉が開くと、中にはカウンターとテーブルが並んでいるのが見えた。
お、これは当たりだったみたいだ、喫茶店だ。
「いらっしゃいませ~。」
カウンターの奥から女性の声がする。
「あの~すいません。ここって喫茶店ですか?」
一応の確認のため聞いてみる。
すると奥から銀髪の少女が出てきた、髪はロングで年齢は俺と同じぐらいなのかな。
「喫茶店ではないんですよね。珈琲ぐらいなら出しますけど…飲んできますか?」
聞いといてなんだが喫茶店以外何なんだろうか。
どうみても喫茶店にしか見えないが、もしかしてレストラン?それとも実は裏で政治家がうはうはやってるカジノとか風俗店だったりするのか?
「じゃあ、何のお店なんですか?」
「看板見ましたか?」
「あなたも世界を創りませんか?って書いてあったやつですか。」
「なんだ。しっかり読んでるじゃないですか。なら名前の通りですよ。」
「名前通りって…地球儀を売ってるとか?」
俺の答えにふっふと笑いながらイスを差し出す。
「せっかくですからゆっくりお話しましょう?珈琲でも飲みながら…。」
差し出された椅子に座ると、彼女は茶色の粉とポットを出してきたから驚きだ。
「あ、あのそれは?」
「インスタントですけど、なにか?」
ささっとコップに入れ、トクトクとお湯を注ぎ、ぐるぐると混ぜる。
「はい、どうぞ。」
「あ、どうも。」
「で?何か悩み事とか?」
向こうから話を切り出してきたが、そもそもここが何かまだ分からない。
「突然そう言われましても・・特に無いですよ?」
すると彼女はかなり困ったような顔をしだした。
お悩み相談所とかだった可能性も高い、なにせ学生が多く住んでる街だ。
「あ、相談所じゃ無いです。」
心を読まれたか、そうですか。
「じゃあ…あなたも世界を創りませんか?ってどういう意味なんですか?」
するとこっちをまっすぐ見てこう言った。
「その言葉通りです。ここは世界を売っているのです。」
かなり真顔で言われてしまってどう反応すればいいか正直困る。
中二病なにかこの子は?俺じゃな無くて相談事があるのは君じゃないのか??
「それは、つまりどういうことですか?」
とりあえずしばらく話を聞いてみることにしたが、今すぐこの変な店を出て家に帰りたい。
しかも、あれほど熱かったのに今はすごい寒い。
「他の世界に行ってそこの神様になり、一から世界を構築してもらいます。」
「へぇー神様にね。さぞお高いんでしょうね?」
馬鹿にしたような口調で俺が言うと、向こうもこっちが全く信じてないことに気付いたらしい。
「まぁそうですね、普通の人ならそうなりますよね。」
「そうですよ、そんな夢物語信じるほうがおかしいですよ。」
どうやら、冗談を言って俺をからかっていたのか。
ほっと胸をなでおろす俺に彼女からの一言。
「じゃあ、他の人が創った異世界に行ってみましょうか。そうすれば信じてくれそうですし。」
「え?何言って・・・。」
何処から出したか目の前に青い本が出される。
そして、彼女は本の上に手を手を置くとこう言った。
「本よ、我をこの世界に導きたまえ。」
すると本から青白い光が出て俺の視界を埋め尽くした。
そして、目の前が真っ白になる。
「な、なにが!?」
しばらくして目が見えるようになると、特に何も変わっていなかった。
そう、なにも変わっていなかった。
目の前には銀髪中二病と飲みかけの珈琲。
窓の外には公園が・・・。
「あ、気が付きました?」
そう、窓の外には一面の花畑が広がっていたのだ。
慌てて窓に近寄り叩いてみるが、間違えなく液晶ではなくガラスだ。
ドアを開けて外に出ると花のいい香りが漂っている。
「これ本物か?」
恐る恐る花に触れてみるが確かに感覚がある。
「じゃあ、行きましょうか?」
いつの間にエプロンを外し、カバンをかけて俺の後ろに立っていた。
「私はメアリー。よろしくね。」
何が何だか理解してない俺に急に自己紹介をしてもどうかと思う。
困惑しながらもとりあえず冷静を保ち、
「ま、誠です。よろしく。」
前書いたのを少し変えたものです。ただ暇だから書いてるだけなんで、批判でも感想でもなんでもドウゾ。