【幕間3】
薄暗く、月も淡く陰りつつある中、激しい戦音を奏でる傍らで、一つの小さな影が溜息交じりに呟く。
「よくもまぁ、無茶をするものじゃ」
物陰越しから、一匹と一人の死闘を眺めながら、手に抓まれた、封の切れた銀袋をひらひらと弄ぶ。
小さな影は、尚も二つの存在へと注視していた。
目を細め、事の結末をこの双眸に焼き付けるかの如く、真っすぐに離さず見ていた。
「しかし、我は何をやってるんじゃろうな……」
猛々しく纏う――雷光の如き衣。
小さな影には忌々しく映る少年の姿に、ほんの気まぐれとは言え、手を貸してしまった自身へと悪態を吐く。
初めは、ただの高みの見物のつもりだった。
本当なら、使役する使い魔の目を通して、事の顛末を見届けるだけ――のつもりだったのだが……。
「みっともない所を見せよってからに、これで死んでは我の立場はどうなる」
己が認め、自身を討ち倒した少年が、無様に痛め付けられる姿を晒すものだから、つい、敵とは言え直接手助けをしてしまった。
使い魔を貸し与えたのも、単純に傍観するのが目的だったのだが、当の使い魔が誠実な性格の持ち主故に、結果的には手を貸していたと言っても良いのだろうが……。
「まったく、付いていけと命令はしたが、協力しろとは言っとらんぞ?」
傍らに佇む使い魔へと視線を向け、影は溜息と共に苦言を吐露する。
『申し訳御座いません。処分は如何様にも』
「気にするな、ただの愚痴じゃ。お主に落ち度はない。寧ろ褒めよう。流石我が使い魔じゃ」
使い魔はハッと頭を下げ、主君の言葉に感謝の意を見せる。
しかし、自身も事が大事になる前には、何かしら手を打つべきだと考えていた事もあり、少年の行動自体には賛同的ではあった。使い魔の行動を律しなかった事がその証拠である。
そう考えれば、いくら乗り気では無かったとしても、恩を売ってやるのも一興か……と、考えるべきだろうとも思う訳なのだが――
「うむ、流石に我らしくなかったな」
すぐに自身が行った行動を否定した。
いくら気まぐれとは言えど、敵を手助けする事自体、自身の立場から見ても在り得ない事なのだと思った。だが、結果として少年を助けてしまったのは、色々と複雑な気分ではあった。
「まぁ、今回だけと考えればいいか。ともあれ、そろそろ戻るとするか」
影は踵を返し、その場を後にしようとする。
『姫よ、もうよろしいのですか?』
「結果は見えとる。もう終いじゃ」
影がそう告げた時には、少年が相対する敵の胸を刺し貫いていたのだった。




