プロローグ
少年がいたのは薄暗い部屋だった。
ベッドと思える物はなく毛布が一枚、冷たい床に叩きつけられたような形で固まっている。部屋の中心で体育座りをしている少年の周りには割れたフラスコや試験管などの科学用品、ドライバーやカッターナイフなどが無造作に散らばっていた。壁には刃物を突き刺した痕跡が無数に存在している。
正面に取り付けられた、鉄格子を模した少し大きめの窓から風が入り込み、少年の髪を揺らす。
刹那、鳴り響いた一発の銃声。少年はビクリと肩を上下させる。何年経っても慣れることのない、その日常風景に恐怖を覚え頭を抱え込み小さくなった。体全身が震え出す。
再び銃声。今度はさっきより遠い場所から聞こえてきた。
「……嫌だ」
掠れた声で呟く。
「もうやめろよ……」
少年を苦しませる銃声は止まることを知らない。外の古今東西から耳に届く回数は増えていくばかりだ。
「やめろって言ってるだろ!」
一瞬にして銃声が止む。
静寂の後、再び動き始めた外に構わず、少年は言葉を紡ぎ出す。
「こんなの……正気じゃない」
頭を抱えた手で自らの髪を掴む。今にも壊れてしまいそうな、その姿は年頃の少年とは思えない程儚い。
「……誰か、助けて……」
怖いよ。
「助けて……ッ」
お母さん、一生のお願いだから。
「俺を……俺をここから出して!」
もう、限界なんだ。