高校イベントといえば文化祭ですか!?その4
相変わらず高槻が残念です。
「メニューはこちらになります。決まりましたら私をお呼びください」
接客モードになった南並さんはにっこり笑って私と葉ちゃんにメニューを渡してくれた。
私はそれを正面に座る関元様に渡す。
あ、席は机が四つずつ向かい合ってて、時計回りに私、葉ちゃん、葉山様、関元様、向井様、城野様、四分一様、ゆーくんの順。
私の隣に誰が座るかでもめたけど、じゃんけんを勝ち残った葉ちゃんとゆーくんが座った。
隣が向井様じゃなくてほんとによかった。
教室で向井様の隣の席なのにここでも隣だったら、緊張しちゃって何を食べても味がわからなくなりそう。
「憩ちゃんはなに食べる?」
葉ちゃんからメニューを受け取って開いた。
ちらりと周りを見れば、向井様達はだいたい決まったらしくて、食べ終わったらどこに行くかを話してた。
決めるの早いなあ。
私は優柔不断だからこういうの決めるのに時間がかかるんだよね……。
ゲームとかの初回限定版と特装版を買う時は全然迷わないんだけど。
待たせてるって思うと、ますます焦って決まらない。
うーん……どれも美味しそう。
「あ、これとか美味しそうじゃない。憩ちゃん、こういうの好きでしょ?俺がこっちを頼むから分けっこしよう?」
ゆーくんが勧めてくれたのは、狂ったお茶会セットと白雪姫のアップルパイ。
狂ったお茶会セットは不思議の国のアリスを元にしていて、紅茶とシフォンケーキのセット。
「じゃあそれにするよ」
「決まりだな。あるちーん、注文いいか?」
葉ちゃんが軽く片手を上げて南並さんを呼び止めた。
「ええ、大丈夫よ。葉先輩と憩先輩のためなら他の注文なんてどうでもいいわ」
いやいや!?全然どうでもよくないですよ!?
そこは男女差別せずに注文をとって、クラスに貢献しましょう!
「狂ったお茶会セット、お月様セット、アップルパイ、パンプキンパンケーキ、レーズンパウンドケーキ、ヘンゼルとグレーテルのクッキー」
え?今、四分一様は何品注文しました?
呪文みたいに聞こえたんですけど?
あ、向井様達の分まで一緒に注文したんですね。
いくら四分一様が甘党で大食いだからって、一人でそんなに食べるわけがないですよね。
ありえない勘違いしちゃったなあ。
「正義、それだけでいいのか?」
向井様、今なんとおっしゃいました?
私の聞き間違いじゃないなら、“それだけ”って聞こえたんですけど?
それだけなんて軽く五人前はありますよ?
いくらスイーツだからといって、一人で食べれる量じゃないですよ!?
これを全部食べきれるとかどんだけ甘党なんですか!?
スイーツ好きな女の子だって遠慮しますよ!?
っていうか、病気になります!
「ん。最初のお店だから遠慮しないと」
な、ん、で、す、と!?
さっきの注文を四分一様一人で食べきるっていうんですか!?
その体格を保つためには相当のカロリーが必要だってことは理解できますが、こんなに甘いものばかり食べてたら胃がもたれません!?
ん?今、最初の店だからっていいませんでした!?
もしかしてまだまだ食べるつもりなんですか!?
恐るべし、男子高校生の胃袋。
いやそれのも四分一様が特殊なだけ?
基準が向井様達や癒詩しかいないから、よくわからない。
特に癒詩なんてあの体のどこに入るのっていうくらい食べるし。
本人いわく食べるのも選手として大事なことらしい。
じゃないと体が作れないし、なによりエネルギーが持たないんだとか。
間食を含めると一日に五食から七食くらい食べてるんじゃないかな。
それでも太らない(むしろ細マッチョ)なのは腹立たしい。
私なんて食べた分だけ太るのに。
その癒詩よりも食べる四分一様。
……うん。もう四分一様は色々規格外って思っておこう。
深く考えないでおこう。
主に私の精神衛生を保つために。
私が考えている間に注文が決まったらしい。
南並さんが笑顔で『葉先輩と憩先輩の注文を先に作るように伝えるわね』といっていた。
その背中に葉ちゃんが『急いでないから順番を守ってくれよ』と叫んだ。
それを見た他の席で給仕をしていた高萩くんが苦笑いをする。
だから南並さん、女性贔屓はダメですって!
今は男装してるからなおさらです!
他の席の女の子達が熱っぽい顔でこっちをガン見してますよ!?
もうね!南並さんと高萩くんの二人の衣装が完璧すぎて怖い!
はッ!?
今気づいたけど二人はもしかして白雪姫と王子様のセットコスプレ!?
あーね。
だから二人が並んだ時の破壊力が半端ないんだ!
普通の格好でも美人な二人がコスプレした姿は、コスプレ雑誌の表紙級の完成度だよ!?
それなら南並さんが高萩くんをお姫様抱っこするポーズがいい。
いや、南並さんが跪いて高萩くんの手をとって、上目遣いに見上げるポーズも捨てがたい。
どちらも乙女(腐ってるけど)としては譲れない。
後で写真撮らせてくれないかな?
無理なら写真を買わせてほしい。
お金ならいくらでも出すから!
なんて残念なことを考えている間に注文した物が机の上に並べられていた。
仕事が早い!