高校イベントといえば文化祭ですか!?その3
まず南並さんのクラスから行くことになった。
南並さんのクラスではちょっと変わった喫茶店をしてるらしい。
どんな風なのかは、ついてからのお楽しみだと葉ちゃんは教えてくれなかった。
少し不安だけど、楽しみだなあ。
「ここがあるちん達のクラスだぜ」
葉ちゃんが案内してくれた教室はポップでかわいくて、メルヘンな装飾がされていた。
扉を開けると外装以上にメルヘンな雰囲気だった。
普段は生徒の授業に使われている机にはギンガムチェックのテーブルクロス。
天井には風船がいくつも浮かび、壁にはリボンや折り紙の輪飾り。
止めとばかりに、案内してくれるウェイトレス達は世界的に有名な童話のコスプレをしていた。
「え、長澤先輩?それに高槻さん達まで!?」
聞き覚えのある声の方へ視線を向けると。
白雪姫のコスプレをした高萩くんが、大きな二重の目をこれでもかと開いてこちらを見ていた。
白雪姫のコスプレをした高萩くんが、大きな二重の目をこれでもかと開いてこちらを見ていた!
思わず2回もいってしまうほど、高萩くんの白雪姫姿は似合いすぎていた。
つややかな黒髪にはリボンつきの赤いカチューシャ。
髪と同じ色をした二重の瞳はふんわりとパステルカラーのアイメイク。
肉厚な真っ赤な唇はグロスで艶やか。
するりとした撫で肩はふわりと膨らんだ袖に包まれ。
藍色をベースにした膝上ワンピースドレスからは折れそうほど細い足がすらりと伸び。
何よりスカートとニーハイの間からのぞく雪のように白い太ももは見るものの視線を釘付けに。
視線を感じて、スカートの裾を気にしながら照れる高萩さんの顔も最高です!
どこから見ても完璧な男の娘が目の前にいるよ!?
普通の女の子、いやモデルよりも可愛い!
これは目に焼きつけるだけじゃもったいない!
ぜひとも写真に納めて、高萩さんの許可がもらえたらネットに拡散したい!
いやいやこの美少女を世界に広めなければなるまい!
「葉ちゃん、ここ写真」
「憩先輩~!来てくれたんですね!相変わらず小さくて可愛いわ!このまま家の娘にしたいくらいね!」
私の欲を途中で遮ったのは、南並さんだった。
タックルかと思うような強烈な勢いで、背後から抱きつかれる。
デジャブを感じながら振り替えって、言葉が出なかった。
肩までの髪は一つにまとめてポニーテールに。
綺麗系な顔は男装メイク。
あのメロンなおっぱいはどんな魔法を使ったのか、細身で紺色のタキシードにスッキリと収まって。
右肩にはブローチで朱色のマントが止められ。
どこから見てもファンタジー系な乙女ゲームの王子様だ!
それもパッケージ中央じゃなくて、その隣にいる性別を越えた綺麗系な腹黒か、クーデレ!
眼鏡越しに甘い視線で見つめられただけでも、腰が砕けそう!
美人は性別を越えるって本当なんだね!
南並さんと高萩のクラスメイト達のメイク技術と裁縫技術もすごすぎる!
男女で骨格とか肉づきとか違うのにうまくカバーして、二人の良さをさらに引き出してる!
けしからん!もっとやれ!
ぼおっと見とれてしまった私は誰かに腕を引かれ、そのまま腕の中に閉じこめられた。
「君、誰?俺の憩ちゃんと仲がいいみたいだけど馴れ馴れしい。勝手に俺の憩ちゃんに触らないでよ」
いやいや、ゆーくん。
女の子相手にそんな警戒しなくても大丈夫だよ。
南並さんはちょっと変態的に女の子(と一部の男の子)が好きなだけで、実際の被害はそんなにないし。
あと私はゆーくんのものじゃないからね?
「あなたこそ私の憩先輩に馴れ馴れしくしすぎよ。さっさとあなたの汗臭い腕から憩先輩を解放しなさい」
南並さんの視線が氷のように冷たい。
男嫌いスイッチが入ってしまってる!
ゆーくんはいつもこんな感じだし、汗臭くないよ。
むしろいい匂いしかしない。
あと私は南並さんのものでもないからね!
「二人ともそれよりも大事なことがあるだろ?」
葉ちゃんが二人の間に入り、真剣な表情で遮った。
「憩ちゃんよりも大事なことって何?」
「それは、ほたるんのパンツが何色かってことだろ」
葉ちゃんはキリッとした顔でいいきった。
気になってたけど今それ聞く!?
っていうか、聞いちゃっていいの!?
「葉先輩、今日の蛍のパンツは白のすけすけ総レースよ」
南並さんが真顔で答えた。
ええ!?高萩さんはそんな攻め攻めなパンツはいてるの!?
文武祭のために嫌々女装してると思ってたのに
、案外ノリノリで参加してたんだ。
瑞貴ちゃん以外にも、こんな近くに女装趣味の人っているんだね。
「ち、違います!僕にそんな趣味はありませんから!今回のこれは今日だけって話だから着てるんです!本当は今すぐ脱ぎたいくらい恥ずかしいんですよ!」
高萩くんは耳まで顔を赤くして、全力で否定する。
でも真っ赤な顔でスカート押さえながら、プルプル震えてるのは逆効果だと思います。
他の席に座ってる男のお客様が皆こっち見てるし。
「え。今からこの場で……ぃってえ!?」
「アンタ、しばらく黙ってなさい」
冷たいオーラを全身から発した葉山様が葉ちゃんの頭をわしづかみにしている。
葉ちゃんからSOSの視線を向けられるけど、そっと顔を反らした。
裏切り者っていわれたけど、葉ちゃんも助けてくれなかったよね。
私には葉山様を止めることなんてできないからごめんね。
「えっと、南並さん、だったかな?とりあえず席に案内してくれるかな?」
はっ!?そういえばまだ席にもついてなかった。
入り口で騒いで、他のお客様に申し訳ない。
さすが関元様!フォローは完璧ですね!
そして私達はようやく席についたのだった。